2011年12月12日月曜日

地震・津波・原発災害から10ヶ月講演会

=地震・津波・原発災害から10ヶ月=

「現状は、今後の課題は」

 東日本大震災から9ヶ月が経過しようとしています。しかし、復旧・復興は未だ進
まず、11月下旬の新聞報道でも、「死亡=15.840人、行方不明= 3.611人、震災避難
者=328,903人jであり、被災された方々の苦悩を窺い知ることが出来ます。特に、
東京電力福島第一原発の「放射線被爆」に対する災害は、単に生活苦にとどまら
ず、住居の確保、失業と就職の問題、損害賠償の算定、農業・漁業・サービス業の復
興と、予想しただけでも何10年にも及ぷ困難が待ち受けていると想定できます。
 また、12月初旬に公表された東京電力の「事故調査中間報告」を見ましても、
「弁明に終始」と言われるように、「人災・過失」への反省は一切伺えず、改めて「怒
り」を覚える方々も多数いらつしゃると思われます。
 そこで、今回、標記の課題で、直接福島現地で苦闘されている講師を招き、講演
会を開催することにいたしました。被災はしない者の連帯の課題を学ぶために。

講師紹介=佐藤龍彦氏
・元全逓福島地区本部書記長
・現社民党双葉総支部副代表
・自宅の福島県双葉郡楢葉町から避難中

日時 2012年1月15日(日)午後2時~4時30分
会場 PLP会館4F ( JR天満駅徒歩5分、地下鉄扇町3分)
参加費 500円(カンパとして講師に)
主催・東日本大震災被災者の苦闘に学ぴ、連帯する講演会実行委員会
    (労働大学関西・大阪市北区天神橋3-9-27、PLP会館内)

2011年12月8日木曜日

労農派の歴史研究会第134回例会報告

「社公合意」を学習しました。19 8 0年に決定されたこの文書の内容の大枠は、前回みた『国民統一綱領』が反映されているので、とくに悪いわけではないのですが、「日本共産党は、この政権協議の対象としない」ということを明記してあるので、「社共共闘をやめることを内外に宣言した文書」として、繰り返し共産党からの批判を受けたものです。

 当時はずっと右傾化の波が続いていたのですが、6月の衆参同日選挙で自民党が大勝し、社会党が1 0 7議席に転落した後だったので、右からの圧力がより強かったのです7 9年にサッチャーがイギリス首相に就任し、8 1年1月にレーガンがアメリカ大統領に就任して、国際的にも東西対立が激化していて、新自由主義の風が吹き始めた時期でありました。社公合意を推進した人たちは「社公民協力で政権へ」という構想をえがいていたのですが、そう簡単ではありませんでした。8 3年の選挙では、社会党の議席は回復しましたが、ごくわずか(10 7から112へ)でした。

 この点に関連して、社公民路線推進の人々を批判することもできますが、それよりも大事なのは、左派の側もパラパラであったことでしょう。社会党の左派も団結が乱れていたし、総評も力量が低下していました。左派内部の「犯人探し」になってはまずいのですが、やはり弱さを率直に指摘し、これからの運動の参考にすることは必要でしょう。

 大衆運動全体が停滞しており、どの左翼組織も、伸び悩んでいました。われわれにも反省点はあるのですが、それでも8 0年代に新しい仲間を獲得できた党派は他にはあまりなく、その結果が現在の全左翼組織の高齢化という現実になっているわけです。高度経済成長の波の中で総評が年、々かなりの賃上げを獲得し、われわれは幹部を突き上げながら新しい仲間を獲得していたわけですが、今から振り返れば、もう少しいろいろなことが出来だのではないかという気がします。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_008.htm

2011年12月6日火曜日

2011年12月6日更新記録

文献・資料に、「声明・結党にあたって」(新社会党)を掲載しました。

山川菊栄賞のページに、2011年度受賞作を追加しました。

労農派の歴史研究会に、第133回研究会報告、第134回研究会案内を掲載しました。
 
約二ヶ月ぶりの更新になってしまいました。管理人に10月以降いろいろ所用が重なったのと、HP管理ファイル移転の後始末に時間をとられたのが原因です。更新の見かけ上は小幅ですが、かなりの量の作業がありました。後始末はだいたい一段落しましたので、これからはまた月一回を基本に更新作業を進めていきます。
 

2011年12月4日日曜日

社会主義協会創立六〇周年記念講演会・レセプション

12月3日、社会主義協会創立六〇周年記念行事として、講演会とレセプションが行われました。

講演会は、午後3時半より日本教育会館第五会議室で開催されました。小島恒久代表が一時間以上にわたって「社会主義協会の歴史に学ぶ」と題する協会の歴史を概観する講演をおこなった後、田井肇、平地一郎両氏が「私と社会主義協会」と題して自己と協会の関わりについて十五分あまり話しました。100人以上の参加者があり、会場は補助椅子も出るほどでした。

続いて、会場をホテルグランドパレスに移して、レセプションが午後六時より行われました。
レセプションは伊藤修『社会主義』編集長の司会で進行し、又市社民党副党首(福島党首代理)、高橋アイ女性会議共同代表、柏原社青同委員長、荻野自治労副委員長、小川研労働大学出版センターセンター・ネットワーク労大代表らがあいさつ、伊藤茂氏が乾杯あいさつをおこないました。
また福島瑞穂社民党党首、保坂展人世田谷区長からのメッセージ朗読もありました。福島党首は出席予定でしたが、反原発で米誌の「世界の一〇〇人」に選ばれ、急遽訪米したため不参加とのこと。

このほか、真子俊久、西澤清、平岡幸雄氏らのあいさつもありました。レセプションは最後に山崎耕一郎代表代行の閉会挨拶で、盛況の内に終わりました。

2011年12月1日木曜日

『社会主義』2011年12月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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横田昌三  東日本大震災復興と財源をめぐって
特集「現下の経済・政治・労働情勢」
柏井一郎  日本経済を直撃する大震災と欧米金融危機
福田弘隆  野田内閣の発足と日本政治の動向
小川達雄  労働者状態の悪化と労働者運動の課題
岡田新一  第48回護憲大会報告
遠藤正勝  「東日本大震災」半年が過ぎました
善明建一  「脱原発依存」を決定した連合第12回定期大会
広田貞治  批評
   マルクス主義と春闘の復活
中野麻美  インターネット社会における弁護士批判
   -市場原理主義とポピュリズムの狭間で-
篠原和男  地域から生活改善の運動を推進する
木村敏彦  プロレタリア作家 葉山嘉樹と現代
瀬戸宏   2011年社会主義協会訪中団報告
加納克己  たたかい一生
   -解題「マルクス主義の学説と三つの源泉」を読んで-
中村譲   古典を読む⑱ 格闘するレーニン(二)
   『わが国の革命におけるプロレタリアートの任務』(中)
   社会主義協会創立60年記念行事のお知らせ

2011年11月25日金曜日

本年の山川菊栄賞決定

11月23日に選考委員会が開かれ、大橋史恵『現代中国の移住家事労働者-農村・都市関係と再生産労働のジェンダー・ポリティクス』(お茶の水書房)に決定したとのことです。近く本体にも書き込みますが、とりあえずここでお知らせします。贈呈式は三月で調整中とのことです。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/yamakawakikue.htm

2011年11月6日日曜日

労農派の歴史研究会第133回例会報告

「国民統一の基本綱領」の本文を学習しました。当時の社会党の過渡的政権から社会主義政権までの展望を、一番まともに成文化したものだと思います。中央でも地方でも、われわれは熱心に討議に参加しました。

 93年にできた細川政権は、この統一綱領に書かれているものとは違いますが、その[応用」として理解できます。しかしその後にできた、村山内閣は社会党のどんな綱領的文書にも書かれていないような、変則的な出来かたでした。それなのに細川内閣においては、社会党(とくに左派)は、しょっちゅう邪魔者扱いされていました。村山内閣においては、自民党におだてられ、うまくのせられて、けっこう良い気分でした。敗戦50年の年の「村山談話」など、歴史的な置き土産も残すことができました。こういうところが、現実政治の難しいところの一つではないかと思います。綱領的な次元で「近い」勢力と、感情的にはうまく付き合えず、「遠い」人だちとは(無理に一致させようとしないので)、案外、うまくやれる面があるのです。
 ただ、そうはいっても、レポートにあるように、村山内閣への参加が正しい選択であったかどうか、きちんと総括をしておくことは、大事だと思います。

 次回は[社公合意]を学習します。これは1980年に、飛鳥田委員長のもとで、社会党が公明党と合意して確認した文書です。共産党系の人だちと話していると、この「社公合意」が目本の政治を反動化させた、というような見方をしていることが多いので、驚きます。たしかに「日本共産党は、この政権協議の対象にしない」と明記してあるので「反共」という評価になるのでしょう。しかし社会党内では、飛鳥田委員長は、もっと右傾化せよという圧力に対して、「この程度にとどめた」のです。上記の部分以外は、悪くはないと記憶しています。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_008.htm

2011年11月1日火曜日

『社会主義』2011年11月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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特集 民主党政権2年間の検証
善明建一◇民主党結党から政権樹立15年の足跡を辿る
中島章夫◇世論調査(図表)から見る政権交代の2年間
山崎耕一郎◇民主党政権誕生とその歴史的意義―冷戦後、グローバル化への遅れた適応
広田貞治◇「ねじれ国会」と社民党の役割

佐藤保◇思い出すことども 私と社会主義協会(4)協会とのかかわりの始まり
武藤聡◇公務員の労働基本権の回復に向けて
町村進◇第3次補正予算と2012年度概算要求に見る地方財政
松永裕方◇資本主義の危機の深化と社会主義―ソ連社会主義崩壊から20
中村ひろ子◇批評 資本主義社会の中での「正義」の要求
小林晃◇「福祉国家」論について
鎌倉孝夫◇原発震災を考える()脱原発の理論武装
山下孝行◇大震災と原発事故で私たちの労働環境はどう変化したか
中村讓◇古典を読む⑱格闘するレーニン(1)『わが国の革命におけるプロレタリアートの任務』

2011年10月2日日曜日

ソ連崩壊20年シンポジウム案内

 私が役員をしている社会主義理論学会が主催しソ連崩壊20年シンポジウムを開催します。今回は資料室関係者の報告はありませんが、興味を持つ方も多いと思いますので、案内を転載します。詳細は社会主義理論学会HPをご覧下さい。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/sost/index.html

ソ連邦崩壊20年シンポジウムの案内
(詳細案内のページ http://wwwsoc.nii.ac.jp/sost/myweb1_017.htm)
 11月6日(日) 10:00~17:30(9:30開場)
会場:明治大学リバティタワー  12F(御茶の水)

●自主企画 午前10時から午後1時
 1 社会主義像の探究
報告1:社会主義の歴史と残された可能性  森岡真史(立命館大学教授)
報告2:社会主義の政治体制は清廉な官僚制 村岡 到(『プランB』編集長)
司会:藤岡 惇(立命館大学教授)
(責任:NPO法人日本針路研究所)
 2 20年後のソ連東欧
報告1:ロシア企業の体制転換──国家・企業・労働者 加藤志津子(明治大学教授)
報告2:自主管理社会主義の教訓 岩田昌征(千葉大学名誉教授)
司会:佐藤和之(高校教師)
(責任:社会主義理論学会)

 3 ソ連崩壊後のアメリカとキューバ
報告1:アメリカ建国の理念にみる市民の共同体 瀬戸岡紘(駒澤大学教授)
報告2:キューバのめざす社会主義 鶴田満彦(中央大学名誉教授)
司会:長島誠一(東京経済大学教授)
(責任:独占研究会)

●全体会 午後2時から5時30分
講演:ソ連はどうして解体/崩壊したか 塩川伸明(東京大学教授)
司会:西川伸一(明治大学教授/学会共同代表)

・参加費:1000円
・主 催:社会主義理論学会
・協 賛:NPO法人日本針路研究所 独占研究会
◎懇親会は6時から 参加費:3000円

2011年10月1日土曜日

『社会主義』2011年10月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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又市征治◇民主党政権の行方と今後の課題
北村巌◇欧州財政金融危機と日本への示唆
 特集 産別大会から秋期闘争の課題を考える
小笠原福司◇産別大会から引き継ぐものを考える
寺下雅人◇労働基本権確立と今後の賃金闘争で論議
亀井昭雄◇脱原発を確認した日教組大会
山上武◇24年間の教訓を活かし国労再興を誓う
平地一郎◇『労働白書』に足りないもの
早瀬進◇2011年版『経済財政白書』の検討
伊藤修◇「社会保障・税一体改革」の現状と展望
津田公男◇中国は「高圧的」とする『防衛白書』
鎌倉孝夫◇研究者の社会的責任―原発震災を考える○上
百済勇◇メルケル政権―フクシマから100日で脱原発
小島恒久◇思い出すことども 私と社会主義協会(3)初期の国際交流の思い出
山崎耕一郎◇批評 愛国者法が示す重症のアメリカ

2011年9月28日水曜日

2011年9月29日サイト更新

文献・資料に、社青同全国学協再建総会議案の残り部分を掲載しました。これで掲載完了です。

会報22号を掲載しました。

労農派の歴史研究会に、第131回、132回研究会報告、第133回研究会案内を掲載しました。

リンク集を改訂しました。
 
約二ヶ月ぶりの更新になってしまいました。社青同全国学協再建総会議案は、ずいぶん時間がかかりましたが、やっと完了しました。社青同関係は社会党関係資料などと異なり、どこの図書館にも保存されていないものが大半です。貴重なものになると思います。
前に書きましたように、資料室のパソコンが壊れ、私の自宅パソコンにファイルを落として再構成したのですが、345ページを超える巨大ファイルになると作成支援ソフトの作成限界に近づいているようで、いろいろ不都合が起きます。リンク集は新たに作り直さざるを得ませんでした。

2011年9月26日月曜日

労農派の歴史研究会第131回例会報告

「新中期路線」は、当時の社会党左派が真剣に議論してつくりました。多くの国民の賛同を得られるように、配慮もしました。しかし結果として、国民の多数を代表する組織(労働組合、農民組合、その他)の指導部の賛同は碍られませんでした。

 1970年代というのは.「ニクソン・ショック」の後の時代です。「ニクソン・ショック」というのは、アメリカの経済が弱くなって、ドルの価値を維持できなくなり、世界経済を不安定にした区切りの出来事です。つまりアメリカを中心とした世界資本主義の弱さをさらけ出した時代になったのです。ソ連を中心とする社会主義の側の内部矛盾も、深刻になっていたようですが。こちらのほうはまだ実情が明らかではありませんでした。そこで西欧でも「ユ―ロ・コミュニズム」などの動きが、活発になっていたのです。「日本でも、遅れるな」という意識もありました。今に比べれば、周囲からの注目もあったと思います。

 しかし、前回の報告でも述べられていたように、「国民連合」(統一戦線)やその政府が実現しなかっただけでなく、その総括、原因の解明もされないまま、情勢が変わってしまったのです。ソ連が崩壊してしまって、落ち着いた総括の議論ができないような雰囲気になったのは事実ですが。問題点の解明はしなければいけないと思います。
 失敗の原因を、特定の人物、勢力に押しつけて、非難-糾弾するという昔の左翼の悪い体質も、克服されなければなりません。客観的に、不一致点を解明して、次の運動では改善する(それでも主導権争いは、なかなかなくならないでしょうが)ようにならないと、成功はおぼつかないと思われます。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_008.htm

2011年9月23日金曜日

社会主義協会創立60周年記念出版

『社会主義協会創立60周年記念出版』のタイトルで、『社会主義』62号復刻版と『社会主義協会六〇年の歴史に学ぶ』の二冊が箱入りセットで社会主義協会から刊行されました。定価1000円。ご注文は社会主義協会へ。一般書店では販売していませんが、大型書店で社会主義協会の電話番号など連絡先を添えて注文すると取り寄せてくれることがあります。

『社会主義』62号は1956(昭和31)年10月発行で、「日本の社会主義」の表題でほぼ全ページが座談会にあてられて、巻末に「社会主義協会の任務について」が付いています。
座談会は1.2.の二部に分かれ、それぞれの内容は次の通りです。
1、五〇年の歩み:岩井章、木原実、向坂逸郎、大内兵衛、山川均、高橋正雄
2、さてこれから:岩井章、木原実、上妻美章、野中卓、太田薫、竹内猛、岡崎三郎

『社会主義協会六〇年の歴史に学ぶ』の内容は、次の通りです。
論文(『社会主義』2011年5月号)
 労農派マルクス主義と社会主義協会■小島恒久
 「社会主義協会規制」とは何であったか■佐藤 保
 社会主義協会と社会党強化の闘い■松永裕方
 社会主義協会の「分裂」と再建運動■善明建一
座談会(『社会主義』2011年1月号~4月号)
 出席者
  小島恒久、佐藤保、松永裕方
  山崎耕一郎、善明建一
なお、箱に次のように刊行意図が書かれています。
 社会主義協会は一九五一年六月に雑誌『社会主義』の創刊号をもって創立され、二〇一一年六月で六〇周年を迎えた。
 すでにわれわれは社会主義協会創立三〇周年において、『労農』『前進』『社会主義』の創刊号を復刻版として発刊し、戦前、戦後の日本におけるマルクス主義の正統な歩みを続けられた先達の苦闘と歴史を学んできた。
 これを踏まえて、社会主義協会創立六〇周年を記念して、二冊の出版物をここに発刊することにした。一冊は『社会主義』第六二号-「日本の社会主義五〇年の歩み 座談会」を復刻版として、二冊は『社会主義』二〇一一年一月号~五月号に掲載した「社会主義六〇年の歴史に学ぶI座談会、論文」を収録したものである。この二冊は日本の労働者運動史を社会主義協会の活動から証言したもので、二一世紀の日本における社会主義への道を研究し、展望していく上で貴重な指針
を問題提起しているものと確信する。
 多くの仲間で活用していただくことを切望する。

2011年9月21日水曜日

労農派の歴史研究会第132回例会報告

前回に学習したように、「国民統一綱領」は、60~70年代の社会党運動、そして「社会
主義への日本の道」や「新中期路線」をふまえて作られた文書です。作成の中心になった
勝:開田さんは、原則をふまえながら、諸階層、諸団体のおかれている条件、そごの人びと
の要求。にも配慮を欠かさず、文書をまとめました。

 この文書¨の特徴は「全野党共闘に支えられた国民連合政府」を目指すという点であると
いえます。当時、党の外では、共産党排除の連合政権か、社共中軸(民社党排=除)の統一
戦線政府か、という議論になうていました。「国民統一綱領」では、共産党も、公明党、民
社党も含む全野党の共闘を実現しようとしたところが、特徴です。社共共闘も、社公民共
闘も、社会党がどちらかの選択を決めれば、比較的簡単に実現できます。しかしそれでは、
労働者の一部を排除して戦線が分断されます。全野党共闘は、実現は難しいのですが、こ
れが実現できれば、政権の支持基盤は大きくなります。

 だか=らこの「国民統一綱領」では、全野党共闘の実現の難しさを良く意識して、構想を
立てています。大衆運動(国民運動)の広がりを前提に、反独占国民連合を形成しようと
いうことです。もちろんそれも、簡単にはできないわけで、できるようにするには、党の
抜本的強化が課題となります。党の力量の強化が、前提条件と言ってよいと思います。
 これも結果として実現できなかったということは、今では事実として明白です。なぜ実
現できなかったのか、それは、教科書には書いてありません。今までの社会党の文書のな
かにも、納得できるものはあまりありません。この点について、運動を体験した社会党員
が納ソ得できるような総括を行い、多くの人に理解されるように文書化することが、重要だ
と思われます。

 政権も、それを支える政党も不安定な現在、これまでの総括を生かすような状況が、来
るかどうかは不明ですが、理論的な用意は、しておかなければな・らないと思います。

http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_008.htm

2011年9月20日火曜日

2011社会主義協会訪中団

 9月5日より9日まで、2011社会主義協会訪中団(佐藤礼次団長ほか四名)が中国・北京を訪問し、中国社会科学院マルクス主義研究院ほかを訪問し、理論交流をおこないました。『社会主義』11月号に詳しい報告が掲載される予定ですが、ここでも簡単に報告します。

日程は次の通りです。
9月5日 北京到着
9月6日 中国社会科学院経済研究所を訪問、斐小革研究員(中国資本論研究会秘書長)から中国での『資本論』研究の状況について報告を受ける。
9月7日 終日、中国社会科学院マルクス主義研究院と交流。中国側は今回の交流をそれまでから一歩高めて第一回中日社会主義研究者フォーラムとしました。日本側、中国側とも各五名が日・中の社会問題などについて発言しました。通訳の時間もあるので実質発言時間は一人十分となり、少し時間不足の感もありましたが、広汎な問題について意見交換ができました。
中国社会科学院公式HPに紹介があります。
http://www.cssn.cn/news/407226.htm
9月8日 見学(中国国家博物館)、自由時間(買い物)ほか
メンバーはいずれも何度か中国を訪問しており、北京の観光地はだいたい行っているので、天安門広場東側にある広大な中国国家博物館を見学しました。
9月9日 帰国

中国側は中日社会主義研究者フォーラムを毎年行いたいようですが、社会主義協会の力量も承知しており、今後については双方で協議することになっています。全体として、今回の訪中も大きな成果をあげたと言えるでしょう。

2011年9月1日木曜日

『社会主義』2011年9月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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 特集 大震災と原発事故五ヵ月を経て
小島力◇帰れない朝
角田政志◇原発が子どもの未来、教職員の生活を破壊
内海幸一◇原発事故による自治体労働者の安全を確保せよ
五味明大◇福島第一原子力発電所爆発事故と労働者災害
資料 放射線の健康への影響についての調査
佐々木譲◇被災地後方支援と今後の町作り
気仙沼市職労◇震災発令の意味を理解しない市長と対峙して
豊巻浩也◇大津波は、「どんなところ」にやってきたのか
楢村秀子◇『中小企業白書』から大震災・原発事故を見る
中島修◇フクシマと向き合うことを確認・原水禁大会
山川均◇復興問題と社会主義的政策<再掲>
川上登◇地方公務員給与削減を通じた交付税削減を考える
<視点と眼差>浜田仁左衛門のこと・原均/『美しきものの伝説』・瀬戸宏
批評 小笠原福司◇それぞれの戦士の碑
小島恒久◇思い出すことども私と社会主義協会②労働者学習との関わり
2010年度山川菊栄賞受賞記念スピーチ
杉浦浩美◇女性の身体性の主張

2011年8月28日日曜日

現代社会問題研究会2011年夏季研究集会開催

 8月27日、現代社会問題研究会2011年夏季研究集会が立教大学で開催されました。
今年は47名の参加者がありました。(速報です。後日補強します)

2011年8月2日火曜日

ローザ・ルクセンブルク全集、選集刊行へ

トラブルで刊行が遅れていたローザ・ルクセンブルク全集ですが、トラブルも解決し、全集第1巻が9月5日頃に出版されるとのことです。

また、全集に先立ってローザ・ルクセンブルク選集の刊行も始まりました。選集第1巻『資本蓄積論』第1篇(小林勝訳)が、6月20日に御茶の水書房から出版されたとのことです。同社HPにも紹介が出ています。定価3800円プラス消費税。
選集第2巻の『ポーランドの産業的発展』(小林勝訳)は、8月5日に出版で、定価は消費税込みで4620円とのことです。

トラブルは御茶の水書房側の完勝に終わったとのことです。その内情も多少は聞いていますが、ここでは書かないことにします。ともあれ、日本語版ローザ全集、選集刊行によって日本のマルクス主義思想が多少なりとも豊かになるのは、喜ばしいことです。

2011年8月1日月曜日

『社会主義』2011年8月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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又市征治◇混迷を深める管内閣と社民党の役割
特集 税制、社会保障、TPPを考える
横田昌三◇「社会保障・税一体改革」成案を検討する
仲田信雄◇連合の「税制改革基本大綱」と消費税増税問題
高橋俊夫◇連合の「新21世紀社会保障ビジョン」の検討
善明建一◇TPP(環太平洋経済連携協定)を考える
伊高浩昭◇チャべス・ベネズエラ大統領が癌の治療で入院
津田公男◇広がる中東の「民衆革命」
佐古正明◇私鉄広島電鉄支部の11春闘を振り返って
森嗣郎◇新日鉄と住友金属合併は国内鉄鋼産業の大合理化
松永裕方◇批評・八月に思うこと
小島恒久◇思いだすことども 私と社会主義協会①向坂先生との出会いと研究会
山藤彰◇私の問題提起①社会主義協会創立60年に当り
山川菊栄生誕120年記念事業・連続学習会 第3回同一価値労働同一賃金について―質疑応答
真鍋健一◇原発事故から5ヵ月―福島からの報告

2011年7月29日金曜日

2011年7月29日サイト更新

文献・資料に、社青同全国学協再建総会議案に第二章の一部を追加しました。掲載未完です。
社青同第33回大会宣言に大会写真をpdfで追加しました。

労農派の歴史研究会に、第130回研究会報告、第131回研究会案内を掲載しました。
表紙に、現代社会問題研究会2011年夏季研究集会案内を掲載しました。

今回の更新は小規模にみえますが、直接の更新以外のところでたいへんな作業がありました。サイトの作成、管理ファイルを入れている労働者運動資料室のパソコンが動かなくなり、ファィル更新も取り出しも出来なくなったのです。資料室のパソコンは2003年に資料室が開設された時に購入した中古パソコンで、OSはウィンドーズ98という時代物です。もともと中古だったものを8年間使い続けたので、遂に寿命がきたようです。
ファィルが取り出せないので、ネット上にあるファイルをダウンロードして私の自宅のパソコンに取り込んでファイルを再構築しました。しかし8年間の間に345ページもある巨大サイトに成長しており、HP作成ソフトが予想していない量のためか、再構築の際にもさまざまな誤作動がありました。なんとか基本的な再構築を終えて、本日簡単な更新ができたわけです。しばらくの間皆さまにご不便をおかけすることもあるかもしれませんが、どうかご了解下さい。

2011年7月22日金曜日

2011年度現代社会問題研究会夏季研究集会のお知らせ

 毎年恒例の現代社会問題研究会夏季研究集会が今年も開催されます。

 同研究会HPから主要部分を転載しておきます。
http://www.geocities.jp/gensya2004/myweb20_019.htm

開催日時 2011年8月27日(土)午後1時00分~5時00分
開催場所 立教大学 5号館第一、第二会議室(JR池袋駅西口より徒歩10分)
         *昨年までと会議室が変わっていますのでご注意ください。
テーマ Ⅰ 税と社会保障の一体改革(伊藤修氏)
Ⅱ ジェンダー雇用平等と労働運動(山田和代氏)
 参加費 1000円      *終了後懇親会(4000円程度)も予定しています。ご参加を。
現代社会問題研究会
佐賀大学経済学部 平地一郎研究室気付
0952-28-8459 E-mail: hirachi●cc.saga-u.ac.jp
*●を@に変えてください

2011年7月11日月曜日

四谷信子『あるオンナ党員の半生』紹介

四谷信子『あるオンナ党員の半生』
 三十年以上にわたって新宿区議、東京都議を務めた著者の自伝。

目次
はじめに
一、生まれたところ
二、日本社会党結成大会まで
三、社会党が平和憲法作成にどのようにかかわったか
四、国会での憲法の審議
五、日本社会党へ入党、そして本部書記に
六、書記局の状況
七、党本部でのわたし
八、片山内閣の成立
九、片山内閣の崩壊
一〇、芦田内閣の成立と崩壊
一一、婦人の日大会
一二、森戸・稲村論争と労働者の入党
一三、講和条約をめぐる問題
一四、左右分裂
一五、左派社会党第九回大会
一六、分裂後の婦人部
一七、結核で入院
一八、血のメーデー事件
一九、左右統一
二〇、新宿区議になる
二一、砂川闘争、現地でのたたかい
二二、六〇年安保闘争
二三、浅沼委員長のこと
二四、思い出の人々
二五、都議選初当選
二六、都議会初の解散選挙
二七、都議会第一党になってからの社会党と二度の失敗
二八、革新都政の実現
あとがきに代えて--四谷と青砥が語り合う


はじめに
 この生い立ちの稿を書く気持はありませんでした。
 第二次世界大戦が終わってまもなく日本社会党に入党し、六〇年安保闘争の頃までの時期、党内的にはいろいろな問題を抱えつつも社会主義社会を目指して懸命にたたかった時代に、一党員として何を思い、何を考え、どう行動したかの半生を書き残すのは党員としての義務だと多くの仲間から説得され、重い腰をあげた経緯がありました。
 だから個人の生い立ちを書く気はありませんでした。しかし、なぜ北海道の片田舎に生まれたオンナが、当時としては遠い遠い東京へ出てきて、なぜ社会党員となるのか、それを動かす何かあったのか、そこがないと面白くないとまたまた説得され次の一章を書くハメになりました。
 労働者運動資料室刊行 定価 800円
 ご注文は労働者運動資料室まで
電話・FAX 03―5226―8822
郵便振替口座
00150-2-545047 労働者運動資料室


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2011年7月9日土曜日

労農派の歴史研究会第130回例会報告

 前回は、「新中期路線」の「1~3」のレポートをうけ、70年前後の社会党の運動や党
内の議論について、勉強しました。当時の社会党は、政権獲得への意欲をもって、こうい
う文書を作成した。
 60年代の諸闘争、70年闘争を総括して、70年代の政権につなげようという意欲は見え
る。当時、高度成長に伴って新たに出現した公害、物価、過密・過疎の問題なども指摘さ
れているし、アジアの情勢や中ソ論争など情勢も、だいたい特徴的なところはとらえてい
るように見える。にもかかわらず、この時期の社会党は、支持が漸減傾向であった。レポ
ートの中でも指摘されているように、労働運動が後退したからである。

 とくに民間大企業労組は、反ソ・反共的であった。 IMF・JCに組織された金属産業労組
を中軸に、社会党の影響圏外の労組が、運動上、大きな力をもってしまい、実質的に社会
党離れをしてしまっていた。そしてこの点は、この新中期路線の中で、ふれられていない。
当時の社会党本部は、労働運動の中の問題について、ものを言ってはいけなかったのであ
る。だから、労働運動のなかの反ソ・反共的傾向の問題点は、この文書だけでなく、社会
党の他の多くの公式文書の中でもふれられない。しかし労働運動の右傾化・社会党離れと
いうのは、他のどんな問題よりも大きく、社会党政権の実現を困難にしていた。

 社会主義協会や社青同は、労働運動の右傾化を批判することを、誰にも禁じられてはい
なかった。しかしその批判は、なかなか労組内部には浸透しなかった。浸透しないだけで
なく、しだいに関係が希薄になり、対立するようにもなった。今から考えても、もっと上
手な方法があったのかどうかわからないが、当時の我々としては、できるだけ効果的な方
法をとろうとはしたのだが、右傾化は進行してしまった。

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http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_008.htm

2011年7月6日水曜日

2ちゃんねるの『社会主義』に関するデマ

 以前にも(旧「管理人より」)ここで紹介したことがありますが、2ちゃんねるに「社会主義協会・社青同」スレッドがあります。
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/kyousan/1304826982/

 虚実とりまぜたさまざまな議論がされていますが、悪名高い2ちゃんねるの中では比較的まともなスレッドかもしれません。しかし、ここで『社会主義』に関する悪質なデマが最近流されています。『社会主義』をJR総連に毎月500部買い取って貰っている、という書き込みが何度かされているのです。スレッドの中でも否定する発言がありましたし、あまりにも荒唐無稽なので無視していました。
しかし、繰り返し書き込まれるので、ここでコメントしておきます。

私の知る限りそのような事実はまったくありません。

労働者運動資料室と社会主義協会は別団体ですが、友好団体であり役員・会員は重複していますので書いておきます。

2011年7月3日日曜日

国鉄闘争共闘会議声明など

 国鉄闘争共闘会議が6月30日をもって闘争を打ち切り解散することはすでに報道された通りですが、同HPに、「お礼」「声明」が掲載されています。

●国鉄闘争共闘会議と原告団中央協議会からのお礼
http://www7b.biglobe.ne.jp/~tomonigo/news2011/orei.htm
●声明
 http://www7b.biglobe.ne.jp/~tomonigo/news2011/seimei.htm
長い間たいへん御苦労様でした。

2011年7月1日金曜日

『社会主義』2011年7月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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立松潔 東日本大震災と日本経済
 特集 東日本大震災と原発震災に直面して
阿部とも子 「原発事故はおこらない」という前提が生む「被害回避の責任」不在
小島 力   望郷
石丸小四郎  こうして原発震災ははじまった
阪本 清   エネルギー政策歪める電力会社と政府
井上 浩   東日本大震災と核燃料再処理工場
北村 巌   東日本大震災と政策課題
飯田哲也   日本のエネルギー政策を根底から見直す
大槻重信   自衛隊の災害援助隊化
       資料 社民党「脱原発アクションプログラム(要旨)」
町村 進   国家公務員給与10%削減・制度改革四法案

広田貞治   古典を読む⑰向坂逸郎『日本革命と社会党』に学ぶ
       急がれる反独占民主主義の統一戦線の再構築(その三)
伊高浩昭   ラテンアメリカ統合の理想実る
  
瀬戸 宏   批評
       新社会党委員長選挙に思う

       視点と眼差
       「手作りの運動」に思う・佐藤礼次/埼玉県運営委員会から・NT
       山川菊栄記念婦人問題研究奨励金・特別賞受賞記念スピーチ

小西熱子   医療被害者として生きる

2011年6月26日日曜日

いいだももさんを偲ぶ会事務局への返信

「いいだももさんを偲ぶ会」が6月25日に開催されたようです。私はいいだももさんとは関わりがありませんでしたが、おそらく会員になっている「変革のアソシエ」の関係で偲ぶ会の案内が届きました。以下は、私が返信はがきに欠席の通知と共に記した内容です。6月6日に投函しました。扱いは事務局にまかせると書きました。その後事務局からは連絡がなく、会場で閲覧されたかどうかもわかりません。

あまり積極的な内容ではないので、私もこれぎりにしますが、いちおう公的なはがきに書いた内容ですので、ここに記しておくしだいです。(瀬戸宏)

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私はいいだももさんとは面識がありません。いいださんにはあまり好感を持っていません。それは、いいださんの著書『レーニン、毛、終わった』(論創社 2005.1)の李延明の項で、私の評論「李延明の社会主義論」を盗用されたからです。同書出版の直後に気がつきました。内容からも文章の発表時間(拙論は『社会主義理論学会会報』54号 2004.1掲載)からも、いいだ氏の盗用は明らかです。他人の文章に全面的に依拠しながら、典拠をあげないというのは、文筆家、知識人のモラルとしてどうかと思います。出版社等に訴えてもよかったのですが、李延明氏の思想の普及になるならと放置してきました。しかし案内をいただいたのを機に一言いわせていただく次第です。拙論は社会主義理論学会HPに掲載されています。
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私の「李延明の社会主義論」が掲載された『社会主義理論学会会報』54号URLは次の通りです。
http://sost.que.jp/media/myweb1014013.pdf

2011年6月24日金曜日

新社会党委員長選挙公報

選挙も終わりすでに歴史文書となった先日の新社会党委員長選挙公報を下記に転載しました。中央本部から配布された公報をpdfファイル化したものです。管理人の都合ですぐには本体を更新できないので、とりあえずここに転載します。ブログにはpdfファイルが掲載できないので、ジャストシステム・インターネットディスクを利用しています。
(リンク削除)

なお、転載にあたっては新社会党中央本部の同意を得ています。

*6月27日午前、新社会党本部役員より労働者運動資料室に電話連絡があり、転載同意は電話を受けた人の勘違いであり、党内文書の転載を党外団体に中央本部として認めるのは問題なので削除してほしい、とのことでした。残念ですが、著作権のある団体からの公式依頼ですので削除いたします。とりあえずリンクを切り、引き続きインターネットディスクを閉鎖します。(6月27日管理人記)

2011年6月20日月曜日

『「資本論」から社会の仕組みを学ぶ』紹介

 社青同関係出版物で、次の本を紹介します。
「資本論」から社会の仕組みを学ぶ
著者 川村訓史
発行:「青年の声」埼玉総局 2004年2月刊
〒330-0063 さいたま市浦和区高砂3-37-5埼玉社会文化会館一階
電話 048-824-6400 FAX 048-824-6597
e-mail seinen @mc.neweb.ne.jp
*スパンメール防止のため@の前を一字空けています。実際のメールアドレスには空きはありません。
A4版 134P
定価  1000円
印刷所 有限会社合谷印刷所 
「青年の声」連載を「青年の声」埼玉総局(社青同埼玉地本)が一冊にまとめたもので、膨大かつ難解な『資本論』の内容が二十六章に分けてわかりやすくまとめられています。著者の川村訓史氏は日本DDR友好協会、社会党・社民党埼玉県連を経て現在は国会議員秘書です。
刊行物に戻る
http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/myweb1_007.htm

2011年6月19日日曜日

2011年6月18日サイト更新

文献・資料に、社青同全国学協再建総会議案を掲載しました。第二章の一部で、掲載未完です。今回は前回の更新から間がなく、一節ぶんしか追加できませんでした。原本がガリ版刷りなので手動入力するしかなく、時間がかかるのです。ご了解ください。
 
刊行物に『解題 マルクスの学説と三つの源泉』(えるむ書房)を追加しました。えるむ書房の近刊です。
 
労農派の歴史研究会に、第60回-第92回報告、第93回-第127回報告をpdfファイルで掲載しました。各報告を一つ一つこの新「管理人より」に転載するのは難しいので、残っている報告を一ページごとに1文書にまとめ、pdfファイル化しました。
 
山川菊栄賞選考理由等のURLを変更し、選考委員名簿を更新しました。URLの変更先はこのブログです。これで、6月末のさるさる日記廃止対策は終了しました。
 
社青同第32回大会宣言に大会写真をpdfで追加しました。この写真は三年前にいただいていたのですが、サイトのページ数が増えすぎたためか、htmlファイル化がうまくいかず、そのままになっていました。今回思いついて写真画像をpdf化し添付したところ、うまくいきました。掲載の遅れをお詫びいたします。
 

2011年6月17日金曜日

紹介 『解題マルクスの学説と三つの源泉』


マルクス主義理論研究会編
解題マルクスの学説と三つの源泉『マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分』
山崎耕一郎・川村訓史・善明建一著
2011年5月24日 第1刷発行
定価 1000円+税

えるむ書房   e-mail :elmshobo●d2.dion.ne.jp *●を@に替えてください

〒102-0072  東京都千代田区飯田橋1-8-8  ASKビル402号
電話 03-3221-7882
FAX 03-3221-7897

発刊にあたって
 ここ数年、マルクスの『資本論』に関する著書が、書店の新刊コーナに並べられて、売れ行きは良いようである。そのタイトルは「超訳『資本論』」、「マルクスだったらこう考える」、「超人門『資本論』」、「マルクスのかじり方」、「高校生からわかる『資本論』」など様々であるが、その内容はマルクスは何をした人か、から『資本論』第一巻のエキス部分を取り上げ、解説したものなど幅が広い。その著者たちの意図で共通していることは、最近、マルクスに関心を持ちはじめた人、かつて関心を持っていた人に対する『資本論』の学習の薦めである。
 ソ連・東欧社会主義が崩壊してから二〇年が経過するが、「社会主義世界体制」の崩壊は、日本の労働者運動にも強い影響をもたらし、大衆的には社会主義を主張することさえ「自粛」させられるまでに後退したことは否定できない。
 だが二〇〇八年秋のリーマンショックを契機に発生した世界金融恐慌は、資本主義とは何かを多くの労働者に考えさせるようになっている。将来を担う若者は、学校を出ても多くの人が正社員として就職できず、ワーキングプアといわれる非正規労働者で雇用されるしかない。景気が回復し、企業の業績が上がっても、賃金はあがらず、長時間労働で過労死、うつ病など精神疾患、健康破壊、そして、失業者の増大は止まらず、生活苦による生活保護世帯は増え、また自殺者の増大など、労働者の生活の不安定さは増大している。
 少子高齢化社会の到来で、年金、介護などの社会福祉が切り下げられ、公的機関のサービス切り捨てで、地方の疲弊も著しく、老後の生活不安は増大する一途である。こうした国民生活・労働者状態の悪化は、「あくなき利潤」を求めてやまない独占資本の体制的合理化の結果であり、誰もがこうした社会、そして資本主義の剥き出しの姿に疑問を持ち始めている。
 かつては、労働組合でマルクス経済学を中心とした学習会が組織され、労働者としての物の見方、考え方を確立していくことが重視されていたが、この二〇年は、すっかりその様相は変わってしまったと指摘されてから久しいものがある。
 だが最近は、われわれの実践の中でも学校を出て新人社員となって働きはじめた人、そして入社して三~四年経った人などの中に、学習会に参加してみたいという人が増えていることを実感できるようになっている。本書は、そうした労働者の中に生れている前向きな気運に後押しされて、企画され、発刊したものである。
 マルクス、すなわちマルクス主義を学ぶためには、『資本論』を外に置いてはないのであるが、それは将来、挑戦していただくことにして、本書では「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」(レーニン著)、すなわち、ドイツの古典哲学、イギリスの古典経済学、フランスの社会主義思想を取り上げて、マルクス主義とは何か、マルクス主義1科学的社会主義はどのようにして成立したかを「解題」したものである。
 もちろん、本書はその「解題」にすぎない。マルクス主義=科学的社会主義を本格的に学習するには、『共産党宣言』、『空想より科学へ』、『賃労働と資本』、『賃金、価格および利潤』、『フォイエルバッハ論』などの古典を使った学習会でマルクス主義の基礎理論を身につけてほしい。
 そういう意味で本書は、それらを学習していくための事前準備、整理をしたという位置づけになるものである。
 そこであえて強調しておきたいことは、われわれの学習は独習が基本であるということである。その上で仲間との組織的な学習会が必要である。その逆でも構わないが、どちらにしても独習が基本である。独習を補い、よりマルクス主義理論と思想の理解を深めるために仲間との組織的な学習、交流が必要なのである。
 本書の発刊を契機にマルクス、エングルスなどの古典学習会が、全国で無数に組織されることを期待するものである。そのことが結局、マルクス主義の現代的意義、そして今日の労働者運動の実践的活動についての確信を広げることになると考えるからである。
                                                                  二〇一一年五月
                                                          マルクス主義理論研究会
                                                                               
目次
発刊にあたって
マルクスの学説と三つの源泉
 「マルクス主義の三つの源泉と三つの構成部分」
   はじめに
第一章 唯物史観の確立とマルクスの定式
第一節 百科全書派の闘いと唯物論
― 中世までは観念論が支配的
2 「百科全書派」の活動が力関係を変えた
3 妥協せずに科学的知識を広めた
第二節 ヘーゲルによる弁証法的な歴史観
1 苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)、贅沢と浪費
2 「総括された歴史」を説いたヘーゲル
3 矛盾に基づく発展の理論
4 ヘーゲルはなぜ労働者農民が立ち上がるかを理解できない
5 西欧では『対立物との共存』は当たり前
第三節 フォイエルバッハとカントについて
 1 宗教は人間が自己自身と分裂したもの
 2 カント対ヘーゲル
 3 理性を疑うことは必要
 4 カントも読んでみよう
第四節 弁証法の法則、ヘーゲルとエングルス
 1 エングルスが整理した弁証法の三法則
 2 量から質への急転換、その逆
 3 対立物の相互浸透
 4 否定の否定
 5 図式主義は弁証法の敵
第五節 『共産党宣言』第一章
 1 世界に発した革命の宣言
 2 書かれた歴史はすべて階級闘争の歴史
 3 ブルジョア階級の革命的役割
 4 ソ連・東欧社会主義が崩壊しても階級闘争
第六節 マルクスの史的唯物論の要約
 1 マルクスによる史的唯物論の要約
 2 社会の発達は物質的生産力の発展段階に対応する
 3 生産諸条件の物質的変革と上部構造の変革
 4 現在の日本は上部構造の変革が遅れている
 5 資本主義は社会的生産過程の最後の敵対的形態
第七節 資本主義も社会主義もワンパターンではない
 1 各国どこも歴史の上に現在がある
 2 少数の占領者による暴力的支配でスタート
 3 異民族、異論を持つ人々との共存の経験
 4 現在の日本は上部構造の進化が遅れている
 5 過去の社会主義も建設を画一化して失敗
 6 新自由主義による画一化も失敗
 7 冷戦の「勝者」の側も随所で崩れている
 8 「否定の否定」は起こるのか
第二章 古典派経済学とマルクス経済学
第一節 マルクスの経済学研究
 1 マルクスが経済学を研究した理由
 2 経済学の役割
第二節 古典派経済学
 1 古典派経済学とは
 2 古典派経済学とマルクス
 3 古典派経済学の創始者
   《ウイリアム・ペティ(一六二三上六八七年)》
 4 重農学派
   《フランソワ・ケネー(一六九四大七四四年)》
 5 イギリス古典派経済学
 (1) アダムースミス(一七二三~一七九〇年)
 (2) デビッドーリカード(一七七二~一八二三)
第三節 資本主義的生産様式の法則性を明らかにした 『資本論』
  1 『資本論』が明らかにしたこと
  2 『資本論』で分析された資本主義的生産様式とは
  3 『資本論』の構成
  (1)第一巻で明らかにされること
  (2)第二巻で明らかにされること
  (3)第三巻で明らかにされること
  (4)全巻を読もう
第四節 剰余価値学説はマルクス主義の土台
 1 資本主義的生産の目的は価値増殖
 2 価値増殖の秘密
 3 労働力の価値はどのように決まるか
第五節 資本蓄積がもたらすもの
1 生産は継続し、拡大されなければならない
2 拡大再生産によって生じる変化
 (1) 所有と労働が分離する
 (2)資本の蓄積と労働力に対する需要の関係
 (3) 生産性の発展による労働力の削減
3 資本の運動の調整弁としての相対的過剰人口
4 資本主義的生産と恐慌
第六節 資本主義的蓄積の一般的法則と労働者の闘い
1 資本主義的蓄積の一般的法則とは
2 マルクスの真意は
3 窮乏化法則の作用と反作用
4 『資本論』における賃労働と資本の関係と、その現象形態
5 窮乏化の原因をどう具体的に明らかにするのか
6 窮乏化法則への自然発生的な抵抗は
第七節 公務員労働者はどのように搾取されているか
 I あらためて搾取とは何かを考える
 2 労働が生産物に結実しない労働者はどのように搾取されるか
 3 公務員労働者の労働はどのような役割を果たしているか
 4 公務員労働者も搾取されている
第八節 賃金闘争の意義
   1 賃金は自動的には決まらない
   2 なぜ資本は賃金を削減しようとするのか
    (1)競争の激化によるコスト削減競争
    (2)利潤率が低下する
    (3)賃金削減によって利益をだす
   3 賃上げで社会・経済を建て直す
第三章 空想的社会主義と科学的社会主義
 第一節 三人の偉大な空想的社会主義者
  I 空想的社会主義
  (1)サン・シモン(一七六〇~一八二五年)
  (2)フーリエ(一七二二~一八三七年)
  (3)ロバートーオーエン(一七七一~一八五八年)
2 空想的社会主義者の限界性
第二節 資本主義の発展と科学的社会主義の道
1 科学的社会主義
2 労働者階級の火態が社会運助の地盤であり出発点である
3 階級闘争の正体は剰余価値
4 生産力と生産関係の矛盾で社会は発展する
5 資本主義社会で周期的に発生する恐慌
6 資本主義の胎内に社会主義の物質的条件を準備する
 (1)労働者階級の歴史的使命
 (2) 自由の王国への人類の飛躍
第三節 労働者階級と平和革命の展望
 1 プロレタリアート独裁の本質
 2 平和革命と労働者階級の役割
 3 反独占統一戦線運動と連立政権
   (1) 反独占統一戦線の性格
   (2)新自由主義と闘う政治勢力の結集
第四節 社会主義は資本主義に負けたのか
I ソ連・東欧社会主義崩壊の総括を
2 資本主義は人類最後の体制ではない

2011年6月16日木曜日

新社会党委員長選挙結果

新社会党中央本部からの通知によると、投票率は77.9%、得票率は松枝候補74.7%、江原候補20.3%、白票3.8%、無効1.2%とのことです。得票数については非公表とのことです。
当選は松枝候補になります。

2011年6月15日水曜日

鎌倉孝夫報告「朝鮮式社会主義の思想と現実」を聞く

社会主義理論学会第58回研究会としておこなわれた鎌倉孝夫さんの報告「朝鮮式社会主義の思想と現実」を聞きました。私は当日の司会も担当しました。
 休憩を挟んで約二時間におよぶ鎌倉さんの報告を要約するのはたいへん難しいのですが、私の理解では次のようなものです。

 まず最初に、チュチェ思想はスターリニズムを乗り越えようとする志向が明確にあることが指摘されました。ただし『資本論』の理解は不十分とのことです。
 続いて、金正日の論文「社会主義建設の歴史的教訓」(1992)を紹介するかたちで、北朝鮮のソ連崩壊論を分析します。
 報告によれば、ソ連崩壊は社会主義そのものの崩壊ではない。また金正日論文は「ソ連社会主義崩壊」ではなく、「ソ連社会主義挫折」としてるとのこと。そして「挫折」の原因は、社会主義の本質を「人民大衆」を中心に理解していなかったこと、マルクス主義の歴史的制約-革命後の社会主義建設は示されておらず、そのため教条主義(スターリニズム)と修正主義(社会主義の「原則」放棄、思想の自由・多元主義、市場経済導入)の双方が生じたこと-にあるとしているとのことです。

 次に、朝鮮社会主義-チュチェ思想に基づく社会主義-の紹介に入ります。鎌倉さんによれば、朝鮮社会主義は、人間中心-人民大衆中心の社会主義、人間の社会的本質的性格に即し、発展させる社会とのことです。また社会にはその指導者(領袖)と指導勢力(党)が必要だが、決して領袖や党の考えを押しつけるのではなく人民に自分で気づかせていく教育を重視していること、それを通して全人民のチュチェ思想化、インテリ化を計っている、人民の主体的努力が社会主義を前進させる、とのことでした。

 続いて、朝鮮社会主義の現実が紹介されます。朝鮮経済は自立的民族経済(自己完結型経済)を目指し1991年まではかなりの高度成長を遂げており、ピークは1991、92年であったこと、それからソ連東欧社会主義崩壊の影響と大自然災害の中で経済が急速に落ち込み、中川雅彦『朝鮮社会主義経済の理想と現実』(JETRO アジア経済研究所 2011)の数字を引用して、90年代中期には穀物生産が91、92年の20%あまりに落ち込んでしまい、北朝鮮の言う「苦難の行軍」-深刻な食糧難、エネルギー不足が起きたこと、2000年頃から経済が再び上昇し始めるが、まだピーク時の78%程度に止まっていることなどが紹介されました。経済復興の中では軍が重要な役割を果たしており、軍はチュチェ思想が徹底しており、武装だけでなく農業・インフラ整備など生産にも積極的に関わっているとのことです。また北朝鮮の人口はこの間一貫して増加しており、マスコミの言う400万人餓死などはデマであることも指摘されました。そして、近年のグローバリゼーション、市場経済化の潮流の中で経済特別開発区、軍事技術の民間転用などが計られているとのことでした。

 そのあと、参加者との間で予定時間を大幅に上回る活発な質疑応答が行われました。残念ながらさまざまな討議を詳しく紹介することはできません。私の印象に残っているものを記すと、鎌倉さんによれば、北朝鮮は決して閉鎖的ではなく日本からの観光旅行は現在も認めており、北朝鮮に閉鎖的なのは日本の方だ。指導者の世襲については、鎌倉さんは批判的だが、それが北朝鮮の現実だと認めるしかないと考えているとのこと。

 私もいろいろ質問したかったのですが、司会をしていた関係で最後にごく短い発言ができただけでした。
 私の発言内容は以下の通りです。

 鎌倉報告を聞いているとデジャビュ感に襲われる。学生時代に見聞きした文革期の中国を思い出すのである。当時の毛沢東思想も「人民、人民だけが歴史の原動力だ」と言っていた。文革も、建前は党の押しつけではなく人民を主体的自発的に立ち上がらせるものだった。北朝鮮で軍が生産活動にも重要な役割を果たしているのは、文革期に軍が生産建設兵団を作り生産活動も行っていたのと似ている。全人民のインテリ化も、頭脳労働と肉体労働、都市と農村の区別撤廃という文革のスローガンを思い出す。
 文革は、言葉だけみれば今日でも通用するような美しいものが多いが、実際に出現したのはそれとは似ても似つかない社会だった。文革期中国と北朝鮮の比較研究をやる必要がある。また、ソ連崩壊後に穀物生産が20%程度に落ち込むなどソ連崩壊の強い影響を受けたことが事実なら、北朝鮮の言う自立的民族経済は実はまったく形成できておらず、実際にはソ連東欧圏に経済的には深く組み込まれていたのではないか。

 これに対する鎌倉さんの回答は、文革期中国を通して北朝鮮を理解しようというのは、一つの立場としては理解できる、また自立的民族経済がまったく形成できていなかったというのは言い過ぎで、その努力はしていた。九〇年代の経済落ち込みは自然災害の側面もあり、さらに研究しなければならない、というものでした。(瀬戸の理解による要約)
 ともあれ、北朝鮮が社会主義の試行錯誤の一つであることは確かであり、北朝鮮についてのある程度まとまった情報が得られたことは有益でした。

 なお、北朝鮮とは関係ありませんが、福田豊さんと今日も連絡を取り合っているのか尋ねたところ、九〇年代からすでに没交渉になっているとのことでした。(瀬戸宏)

2011年6月12日日曜日

2011年6月12日サイト更新

リンク集に要宏輝 正義の労働運動ふたたび最終章、基礎経済科学研究所、ルネサンス研究所、福田光一事務所を追加しました
文献・資料に、社青同全国学協再建総会議案を掲載したした。第二章の一部までで掲載未完て゜す。また第一章の記載漏れ部分も追加し、解題部分も補強しました。
刊行物・『ある女党員の半生』、『「資本論」から社会の仕組みを学ぶ』リンク先を変更しました。さるさる日記閉鎖にともなう措置です。新リンク先はこのブログです。
労農派の歴史研究会に、129・130回研究会案内、129回研究会報告を掲載しました。
表紙、管理人よりのURLを変更しました。変更先はこのブログです。

今回の更新では、山川菊栄賞選考理由など、労農派の歴史研究会報告の補強がまにあいませんでした。6月末のさるさる日記閉鎖までにもう一回上京できそうですので、その時に更新します。

2011年6月9日木曜日

労農派の歴史研究会第129回例会報告

前回は、「新中期路線」の中身には入らず、当時の社会党について、いろいろと経過や
問題点を話して、終わりました。
 そのときに、あまり整理して言わなかったことを、ちょっと補足します。当時の社会党本部では、経済安定本部(現在の経済企画庁)の職員、その周辺の学者グループがかなり議論に参加、あるいは協力していました。官僚としては、和田博雄の影響下にある人たちが多くいたし、学者は有沢広巳と向坂逸郎の弟子筋の人々が多くいました。党内の勢力としては、和田派(後の勝開田派)、また社会主義協会員が中心でした。この両者は、55年の左右合同反対で一一致しており、その後も緊密な関係にありました。 したがって、官僚たちが持っている統計的な情報についても、最新のものを入手できる位置にいました。
 1960年に、『社会主義日本の設計』(社会主義政策研究会発行、A 5版290頁)という本がでています。有沢広巳。「現代日本資本主義の特質」、高橋正雄・「社会主義政権の課題と準備」、稲葉秀三・「社会主義政権下の財政」、大河内一一男・「労働組合はいかにあるべきか」、大内力・「日本農業をどう変革してゆくか」、の5つの報告をめぐって、いろいろな人が発言するという内容です。参加者にも「大物」がずらりと並んでいます。
 もちろんこの内容は、「社会主義日本」ではなく「社会党政権下の日本」の政策についての議論です。 しかし、優れた学者、政治家が、報告・討論をしています。もしこの時に政権を取っていたら、現在の民主党よりも、うまくやったのではないかという気がします。 (ただし、当時の私は、この本を読んだら「これは改良主義日本の設計」ではないかと、文句をいったかもしれません。)
 しかし当時の社会党が、こういうメンバーで政権構想についての議論をできたというのは、重要な歴史の断面であると思います。

2011年6月3日金曜日

鎌倉孝夫さんの北朝鮮報告

鎌倉孝夫さんが社会主義理論学会6月研究会で北朝鮮に関する研究報告をします。詳細は以下の通りです。

第58回研究会
鎌倉孝夫(埼玉大学名誉教授) 朝鮮式社会主義の思想と現実
参考文献 
鎌倉孝夫『朝鮮半島戦争の危機を読む』(白峰社 2010)
鎌倉孝夫『現代と朝鮮』(社会科学研究所 1993)
日時 2011年6月12日(日)午後2時より
場所 専修大学神田校舎7号館784教室  
会場費 500円(会員、非会員問わず)
詳細は社会主義理論学会HPをご覧下さい。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/sost/index.html

2011年6月2日木曜日

山川菊栄生誕120周年記念映画上映会のお知らせ

*山川菊栄生誕120周年記念ドキュメンタリー映画「山川菊栄の思想と活動『姉妹よ、まずかく疑うことを習え』」上映会が各地で予定されています。山川菊栄記念会HPより転載します。

1 岩手大学全学共通教育科目「ジェンダーの歴史と文化」授業公開
: 2011年 年6月7日(火)13:00~14:30
場所:岩手大学学生センターA 棟G2大教室
問い合わせ先:岩手大学人文社会科学部 海妻径子研究室
Tel/Fax:019-621-6750 email:kkaizuma@iwate-u.ac.jp

2 映像女性学の会 第25回女性監督作品上映会
日時 2011年6月11日(土) 14:00~16:30 
場所 渋谷女性センター アイリス
参加費 1000円   先着50名 事前予約の必要はありません
問合せ先:映像女性学の会・小野まで  
e-mail:ycinef@yahoo.co.jp fax:03-3306-2762


3  大阪上映会 大阪府男女共同参画推進財団 
日時 2011年6月17日(金) 18:30~21:00
場所 ドーンセンター 1F パフォーマンススペース
参加費 700円 定員150名(先着順)
申込み 申込書にてFAXでお申し込みください。
FAX&TEL 072-683-7077

4 東京外国語大学上映会
日時 2011年6月24日(金) 18:00~21:00
場所 東京外国語大学226教室
問合せ 東京外国語大学海外事情研究所
TEL 042-330-5405 e-mail ifa@tufs.ac.jp

5 川崎市男女共同参画センター 上映会
日時 2011年6月26日(日) 13:30~17:00
会場 すくらむ21 4階多目的室
TEL 044-813-0808 FAX 044-813-0864
*詳細な内容や申込書ダウンロード先などは山川菊栄記念会HPをみてください。
  http://www.yamakawakikue.com/

2011年6月1日水曜日

『社会主義』2011年6月号目次

ご注文は社会主義協会へ。東京新宿・紀伊国屋書店本店、東京神田・東京堂書店、福岡・積文館書店新天町店でも販売しています。一冊600円
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 特集 2011春闘総括から単産大会へ
平地一郎◇日本経団連「経労委報告」と社会の行方
小笠原福司◇2011春闘総括から何を引き継ぐのか
足田芳憲◇景気に左右されつつ春闘を闘う
本田久夫◇「宅配統合」による赤字攻撃に抗して
高橋俊夫◇地方連合からみた2011春闘
加納克巳◇36年ぶりに自民党独占に「風穴」をあける
山田あつし◇生活・労働苦にこだわり選挙をたたかう
仲田信雄◇復興財源には消費税しかないのか
沖田カツオ◇大地震・大津波、原発事故に思う
鈴井孝雄◇浜岡から見える原発の問題点
星野幸生◇柏崎から原発を改めて問い直す
高林正廣◇ドイツ左翼党と「これからの社会主義」(二)
岡田新一◇スウェーデンの労働組合を訪問して
向坂逸郎◇山川均の思想と生涯―再録
広田貞治◇古典を読む17向坂逸郎『日本革命と社会党』急がれる反独占民主主義の統一戦線の構築(その2)
<批評>早瀬進◇ドラッカーについて考える

2011年5月30日月曜日

第25回山川菊栄賞

●2005年度山川菊栄賞贈呈式報告
 山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の2005年度対象作品は、森ます美さんの『日本の性差別賃金―同一価値労働同一賃金原則の可能性』(有斐閣、05年6月刊)に決まり、贈呈式が2月11日東京都内で行われた。
今回の受賞作となった『日本の性差別賃金』を森さん自身の記念スピーチから紹介すれば、「九〇年代に大企業女性労働者が始めた男女差別賃金裁判に触発され、彼女たちと一緒にペイ・エクイティ(同一価値労働同一賃金原則)研究を行う中で、九五-七年に商社・営業職における職務評価を実際にこころみ、その成果をまとめたもの」となる。
もう少し内容的に紹介すれば、日本の性差別賃金構造を、大企業の人事・賃金制度の視角から実に丹念に洗い出し、実証的に分析し、明らかにされている。その手法は、京ガス男女賃金差別裁判における<積算・検収>事務職と<ガス工事>監督職の職務比較にも活かされ、地裁での勝利判決となった(控訴審では勝利的和解)ことから、終章では「日本における同一価値労働同一賃金原則の可能性」を示唆されている。
 森ます美さんは、昭和女子大学人間社会学部教授として、労働とジェンダー、社会政策を講じておられるが、贈呈式には、学生さんは少なく、ペイ・エクイティの研究を共にすすめてきた商社の女性たち、男女賃金差別裁判を闘う女性たち、「均等待遇アクション」に関わる女性たちが、遠くは関西からも大勢かけつけていた。賞の選考委員である浅倉むつ子さんが「研究室に閉じこもるのではなく、企業の現場で働く女性たちの運動のただ中に身を置き、彼女たちによる性差別への怒りに共感しつつ、その権利主張に寄り添って、専門家としての理論構築をしている」と推薦の弁を述べられたが、まさにそれが実感できる参加者であった。
 贈呈式の後半は、京ガスの屋嘉比ふみ子さん、労働法学者としての浅倉さんを交えてのシンポジュームになり、日本において同一価値労働同一賃金原則を確立するための今後の課題が話し合われた。会場からの要望も含めて、「少し展望が見えてきた感じ」がした。  中村ひろ子(労働者運動資料室理事)


●推薦の言葉―浅倉むつ子
2005年度の山川菊栄記念婦人問題研究奨励金を、森ます美さんの『日本の性差別賃金』に贈呈できることは、私ども選考委員にとって、本当に嬉しく誇らしいことです。それはまさに本書が、当奨励金の趣旨にとってもっともふさわしい著作だからなのですが、その理由を二つだけ申し上げましょう。
 一つは、森ます美さんの研究への姿勢です。森さんは本書の中で、実に膨大な時間をかけて、多くの資料を丹念に読みこなし、統計を加工し、作図し、自分なりの結論を導き、自分の言葉で語っています。このような、本書を貫いている研究への限りなく誠実で粘り強い姿勢こそ、本書の信頼性をおおいに高めているものだといえるでしょう。
そしてもう一つは、森さんが、研究室に閉じこもるのではなく、企業の現場で働く女性たちの運動のただ中に身を置き、彼女たちによる性差別への怒りに共感しつつ、その権利主張に寄り添って、専門家としての理論構築をしているということです。このように運動との架橋をはかることによって、女性問題研究は、狭い空間に閉じこもりがちな学術の世界にいる人々にも、新たな風を吹き込む役割を果たしているのだと思います。
本書は、このような尊敬すべき森ます美さんによる初の単著です。そして、職種や職務の概念が希薄な日本では「実現不可能」とすら言われてきた「同一価値労働同一賃金原則」に正面から取り組んだ、初めての研究書です。
本書は、日本の男女の大きな賃金格差は、労働市場構造の特殊性や労働者の属性の差からのみ生まれるのではなく、個別企業の人事・賃金制度そのものからも生み出されているものだと主張しています。また、具体的な実践例を示すことによって、日本における同一価値労働同一賃金原則の適用可能性を提起しています。
本書は、まさに労働問題に関心をもつあらゆる人々にとって、「必読の書」であり、女性たちにとっては「待望の書」であるといってよいでしょう。本書が多くの人たちによって読まれていくことを期待します。

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第26回山川菊栄賞

●第26回山川菊栄賞授賞式報告
山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の2006年度対象作品は、糠塚康江さんの『パリテの論理―男女共同参画の技法』(信山社、05年11月刊)に決まり、3月4日(日)都内で贈呈式が行われました。今年は男性の姿がめだちました。受賞者のゼミの学生さんと憲法研究者だったのですが、今回の受賞作品のもつ普遍性、影響力が感じられ、頼もしく思いました。
「パリテの論理」と言われても、多くの方には「何のこと」と思われるでしょう。フランス憲法院が「パリテ(男女同数制)はクォータ(割当)制の一種で女性に特別の権利を与えるものであるから、フランス共和国憲法が規定する男女の平等、個人=市民以外に権利の主体を認めない理念に違反する」としたために、逆に憲法に第3条5項「法律は選挙によって選出される議員職と公職への男女の均等なアクセスを促進する」、第4条2項「政党は、法律によって定められた条件で、第3条5項に表明された原則の実施に貢献する」という項目を入れ(99年)、2000年に「パリテ法」が制定されました。
糠塚さんは、「憲法学の立場から、フランスの共和主義における普遍的市民像を抽出し」、「パリテの論理を、精緻にかつ丹念に分析しながら」、「パリテとクォータの違いを論じています」(推薦の言葉より)。つまり「性差は生まれついたら変わらず、二つの区別はほぼ量的に等しく、女性はマイノリティではない。女性は常に男性とともにあり、女性だけで集団を形成しているわけではない」と明快に論破されているのです。スピーチを伺って、男女平等を主張するとき「使えるな」と思いましたから、これはきちんと読まねばと思っているところです。
受賞式の冒頭で、受賞者へ詫びながら、記念会代表の菅谷直子さんが06年12月17日に逝去されていた報告がありましたこと付け加えておきます。7月14日に偲ぶ会が計画されていますので、詳細が決まり次第報告します。


●山川菊栄賞推薦の言葉
推薦の言葉―浅倉むつ子
2006年度の山川菊栄記念婦人問題研究奨励金は、糠塚康江さんの『パリテの論理』に決定しました。私ども選考委員会が、数多くの候補の中から、もっとも優れた著作として本書を選んだ理由は、以下の通りです。
男女間格差を解消するための「積極的是正措置」であるアファーマティブ・アクションやポジティブ・アクションは、今や多くの国で実施されています。しかし、とりわけクォータ(割当)制については、男女平等原則に照らして、果たして合法なのか違法なのかという熾烈な議論が繰り広げられています。フランスではこの問題をめぐって、1982年に政治分野のクォータ制が違憲判決を受けながらも、99年には憲法改正を通じてその違憲性は克服され、さらに2000年には、性の偏在を克服するための技法として、「パリテ法」が制定されました。以来、フランスでは、さまざまなレベルの選挙を通じて、女性の議席が劇的に増加しています。
糠塚さんは、この著作において、ご専門の憲法学の立場から、フランスの共和主義における普遍的市民像を抽出し、特色のある男女平等原則に照らして、クォータ制が違憲判決を受けなければならなかった論拠を、見事に解明しています。そして1990年代に論壇に登場したパリテの論理を、精緻にかつ丹念に分析しながら、「パリテは50%クォータ制にすぎない」という見解を批判して、両者の違いを論じています。本書に一貫して流れている知的で深い洞察と誠実な研究への姿勢は、敬服に値します。
なぜフランスでは、いったんクォータ制が否定されながらも、憲法改正を行ったのか、そしてパリテ法を実現することができたのか。その論理とはどういうものなのか。私たちは、このような疑問に対する説得力のある回答を、糠塚さんの著作を通じて、初めて、得ることができるのです。このことは、日本で政治分野の男女共同参画を推進しようとしている私たちの実践にも、必ずや重要な手がかりを与えてくれるでしょう。その意味では、女性の権利に関心をもつすべての人にとって、本書は、必読の書といってよいのではないでしょうか。

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第27回山川菊栄賞

●第27回山川菊栄賞授賞式報告
第27回(2007年度)山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の贈呈式が、1月27日(日)午後、東京都港区にある「女性と仕事の未来館」で行なわれました。
今年の贈呈対象が中村桃子さんの『「女ことば」はつくられる』(ひつじ書房)であることは既報の通りですが、中村さんは、関東学院大学経済学部教授として英語を教える一方で、言語学者として、「ことばとフェミニズム」、近年は「ことばとジェンダー」を研究されています。それを和光大学で講じておられる関係で、女性学の研究者や女性運動の活動家とともに、中村さんの薫陶を受けている若い学生さんたちが参加しました。
 贈呈式は、いつものように選考委員のみなさんで分担して進められました。浅倉むつ子さんの司会で始まった式は、最初に重藤都さんから、奨励金の経緯と趣旨が山川菊栄の人となりとともに説明されました。(この式に何度も参加している人は、研究会のなりたちや山川菊栄の人柄を語られていた菅谷直子さんの姿が無いこと―06年暮れ逝去―に歴史を痛感されたことと思います。)
 次に選考委員長の井上輝子さんから、2007年度の対象となった著作には歴史分野のものが多く、しかも占領期の政策を取り扱った若い研究者の著作が目に付いたとの講評がありました。最終選考に残ったのは今田絵里香さんの『「少女」の社会史』と乾淑子さんの『図説 着物の柄に見る戦争』と中村桃子さんの作品であり、全員一致で中村さんの著作が選ばれたと経緯が話されました。
 そして有賀夏紀さんから「女ことばの生成過程を明らかにするに止まらず、国家とジェンダーの関係を明らかにしたスケールの大きい国家論になっています」との推薦の言葉がありました(別に掲載)。
受賞者中村さんのスピーチは、参加者の中には対象作品を読んでいない人たちも多かったと思われますが、話術の巧みさもあって、全員を「桃子ワールド」に引き込んでしまった感がありました。ご自身が研究を深められてきた経緯を次のようにまとめられました。
時と場合によってことばは違う。変わることが前提ならば、言語は創造的に変えられるのではないかと考えた。すると、「女ことば」が自然にできたものなら、使えとのしつけはいらないはずだが言われ続けていることからすれば、一つは<規範の役割>を果たしているのではないか。二つ目に、ここ150年ずっと「女ことば」の乱れが嘆かれているが「それはなぜか」と考えると、背景に「使われていたはず」との思い<信念>があるのではないかと思い至った。三つ目に、地域語いわゆる方言を話す人たちも「女ことば」を知っているのはなぜかと考えたら、メディアから学んだ<知識>だ、という構図が見えてきた。つまり、「女ことば」は、意図的にジェンダーと結びつけて使われ、維持されてきたものである。
スピーチ後の質疑の冒頭では、鈴木裕子さんから「山川菊栄は1920年代にキミとボク問題を書いている。また戦中から誰に読んでもらうかということを念頭において平明なことばで書くことに努めた。漢語を使うのは男の特権とも書いている」と話されました。
 続いて参加者から、教科書に見る「女ことば」の事例、方言のなかに混じる不自然さが話されるなど、中村桃子さんの説を共有し、より深めることができた気がしました。


●推薦の言葉―有賀夏紀
中村桃子さんの『「女ことば」はつくられる』は、構築主義の立場から日本における「女ことば」の生成、普及の過程を、鎌倉・室町・江戸時代から現代に至るまで示した研究ですが、それにとどまらず、国家とジェンダーの関係を明らかにしたスケールの大きい国家論になっています。日常使っていることばのあり方が国家のあり方によって規定され広められ、また逆にことばのあり方が国家のあり方をつくるという言語と国家論の相互作用について、なかむらさんは国内外の膨大な資料を駆使して議論を展開します。議論はオリジナリティや意外さも含み、ものの見事というほかありません。ここではその議論をごくかんたんに紹介します。
 国家が言語をつくること。近代国家の統一のために言語の統一がはかられてきましたが、日本においても明治期に国語の確立がなされました。本書は天皇制家父長国家の下で男性の言葉が国語としてつくられ、その際女ことばが国語から排除され、第二次大戦中の女の国民化とともに女ことばが国語に取り込まれていったことなど、つまり、ジェンダー化された国家がジェンダーかされた言語をつくり出すことを解き明かしています。
 言語が国家のあり方をつくること。中村さんはここでオリジナルな議論を展開します。それは特に、日本帝国主義の植民地支配における女ことばの役割に関して見られます。この問題提起はとてもしんせんで、どのような論が展開されるのか私は非常に興味深く読みましたが、資料で根拠づけられた説得力のある説明は衝撃的でした。日本の優位を示すとされるようになった女ことばの存在が、「優秀な日本」による植民地支配を正当化したことがよくわかります。
そしてこの本は、グローバル化の下で多民族の平等な関係を主張する多文化主義が広がる今日の国家と言語の関係を考える上でも重要と思います。必ずしも単一の言語を国家ないし地域共同体統一の必要条件とはしない動きも出ているなかで、ジェンダーの視点無視されているように見えます。日本語と国家の関係がジェンダーによって規定されてきたことを示した中村さんの研究は、現在、そして今後の国家のあり方を考える上での大きな示唆を、特にジェンダーの視点から与えてくれます。
以上の理由から、中村桃子さんの著書『「女ことば」はつくられる』を山川菊栄記念婦人問題研究奨励金受賞作品として推薦できることを嬉しく思います。

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第29回山川菊栄賞

● 第29回山川菊栄賞贈呈式報告
山川菊栄を記念して創設された婦人問題研究奨励金の第二九回贈呈式が、二月二七日(土)午後、東京・一ッ橋の日本教育会館で行われました。
 第二八回は対象作なしで心配されましたが、第二九回(二〇〇九年度)の対象作には、西倉実季さんの『顔にあざのある女性たち―「問題経験の語り」の社会学』と堀江節子さんの『人間であって人間でなかった―ハンセン病と玉城しげ』の二点が選ばれました。
 今回の対象作はいずれもライフストーリー研究の成果を本にまとめられたものでしたが、第一オーサー(固有の経験を語ってくれた人)と第二オーサーである筆者との相互依存が見事に花開いたと言えるものでした。選考委員の一人、有賀夏紀さんが、「歴史をやる人間は、第一オーサーを記録することで終わってしまいがちだが、西倉さんは個人の経験を社会的問題にしている」と高く評価されましたが、それは堀江さんの書き方にも当てはまることでした。
当日は受賞者による記念スピーチも行われました。
西倉実季さんは、研究過程を紹介するなかで、「顔にあざがあることは美醜の問題と想定したことで、語り手との間で齟齬が生じ、行き詰ってしまった。二年おいて、彼女たちが<普通でない顔>に問題経験を抱いているのだと想定を変えたら見えてきた。調査する私も研究対象であることがわかった」と語られました。
堀江節子さんもまた、「最初一人語りで簡単にまとめてしまったが、寝かせているうちに、しげさんの個人史でいいのかと思うようになった。しげさんの、強制堕胎で殺されてしまった娘への思い、平和で差別のない社会にしたいとの思いを書きこまねばならないと思った」と語られました。
堀江さんのスピーチは、隣に玉城しげさんが座って行なわれ、後半はしげさんへの質問の形をとりましたが、まさにライフストーリーが語り手と聞き手の相互依存の賜物であることを彷彿とさせるものでした。
玉城しげさんの話から、本に書かれていないことを二、三紹介します。
◇敬愛園に来て、だまされた思いに悲しくて、園にあった小さな図書室に通い、本を手にした。その中に山川菊栄さんの本もあった。内容は覚えていないが、あの大変な時代に、女の方が男を尻目に女性活動をされたということで、山川菊栄さんの名前だけは覚えている。文学の先生だけれど、普通の方とは違うと思った。
◇裁判が終わるころから、九州全県の学校や公的な場、お寺に誘われるようになった。ほんとうに思いがけないくらいのたくさんの人との出会いによって、世の中のたくさんのことを知った。韓国朝鮮問題とか被差別部落のことを知った。ほんとうに日本もひどいことをしましたね。日本のこの悲しい歴史を子どもたちに教育で教えていかなければとの思いです。
◇私はこの(動かなくなった)手を子どもたちに見せながら、「治療せずに働かせられたからこうなった。厚生省の金鵄勲章だ」と言う。子どもたちは「金鵄勲章ってなんですか」と聞く。「痛くないですか」とも聞いてくれる。子どもはほんとうに純真でかわいい。そんな子どもたちが、あとで手紙やクリスマスカードをくれる。手作りのいろいろな飾りも送ってくれる。嬉しい。
 なお、記念会からは「今年の一一月三日は菊栄生誕一二〇年、没後三〇年にあたるので、シンポジウムをやります。それにつながる連続学習会も企画しているので、多くの方に参加してほしい」との案内もありました。


●山川菊栄賞推薦のことば 井上輝子
西倉さんの本は、顔にあざのある女性たちへの、6年以上にわたるインタビューの成果をまとめた作品である、西倉さんは、女性たちが経験してきた苦しみと、それへの対処の経験をていねいに記録し、整理・分析している。
本書の意義は、なによりもまず、顔にあざのある女性たちの内面的経験とその変化を鮮やかに描き出して、彼女たちが直面してきた(している)苦しみや悩みを、読者に伝わる形で提示したことにある。
たとえば、幼少期から受けてきたいじめの経験や、人と出会ったりする会話をするときに、相手から執拗な視線や無遠慮な言葉を投げかけられる経験。顔にあざがあるという事実だけでなく、あざを隠している自分に後ろめたさを感じてしまいがちな心理。恋愛や結婚の困難、就職の難しさ。さらに、あざについて言及することがタブーになるなど、家族の中でさえ起きる様々な対立や葛藤等々。顔にあざがある女性たちが直面してきた、このような困難な経験の歴史を、西倉さんが当事者女性たちへのインタビューをつうじて克明に描写し分析されたことに、私は敬意を表したい。
これを可能にした理由の一つは、経験の聞き手と語り手の相互作用をつうじて、物語が構成されていくという、ライフストーリーという研究方法にあるだろうが、それだけではない。当事者にできるかぎり寄り添おうとする西倉さんの姿勢と熱意が、当事者の女性たちとの信頼関係を生みだした結果であると想像される。本書の随所に、インタビュー調査の過程を反省的に振り返る個所が記されているが、ここには西倉さんが、当事者女性たちの声を最大限聞き取ろうとした努力の跡が窺える。
私が本書を推薦する理由は、これだけではない。西倉さんは、あざのある女性たちの問題経験を軽減するための方法についても言及している。異形を障害の一種と捉えるべきなのか否かについての議論を検討した上で、私たちが顔にあざのある人や傷のある人を見かけたときに、過度の関心でもなく過度の無関心でもない「好意的無関心」で接することを、提言する。異形の人たちが抱える困難が、実は異形の人たちに対する、私たち自身の接し方と連動していることを示唆し、その改善を提起した点も、本書の重要な意義といえる。
最後に指摘したいのは、本書が現在進行中の問題経験を記録した、現在進行中の研究であるということだ。本書に登場する女性たちは、現在進行形で生きている人々であるから、当然ながら数年間のインタビューの間に、それぞれの生活環境の変化に応じて、あざについての考え方や対処法も変化しているし、今後も変化し続けるにちがいない。したがって、インタビューを通じて考えた西倉さんの意見や結論も、2009年という時点での仮の見解であるといえるだろう。西倉さん自身が今後さらに研究を重ねることで、さらなる発見を積み重ねていかれることが期待される。また、美醜尺度の危うさ、ジェンダーと外見の関係、「普通」とはなにか、機能的障害と異形との関係等々、本書から読み取れるいくつかの問題提起については、現在進行中の考えるべき課題として、本書の刊行を機に、オープンな議論が展開されることを期待したい。


●山川菊栄賞推薦のことば 加納実紀代
かつて<聞き書き>は、女性史の柱だった。無名の女性たちの生の軌跡、文献資料だけでは明らかにできないからである。それによって無告のまま忘却の闇に葬られようとしていた女性たちがくっきりと歴史に刻まれることになった。しかしいまや<聞き書き>は<オーラル・ヒストリー>となり、社会的に活躍した政治家や官僚男性をも対象とするようになっている。
 そうしたなかで、本書はまさに女性史の原点としての<聞き書き>といえる。著者堀江節子さんは、それまでとくにハンセン病に関心を持っていたわけではない。たまたま話を聞いた玉城しげさんへの人間的共感、堀江さん自身の言葉をつかえば「すぎてしまえばそれまでのものを、『出会い』と感じ、気持ちを通わせたいと願う心」によって、ハンセン病問題に目を開いていったのだ。そこにあるひととひととの魂の共振も女性史の原点である。
 それはさらに堀江さんを国家・天皇制・戦争、そして人間とは何かという根本的な問題に導いてゆく。この本は、国のハンセン病政策によって「人間であって、人間でなかった」人生を強いられたしげさんの人間回復の軌跡とともに、著者自身の<問題発見>の過程をも跡付けるものとなっている。そこに本書の大きな意義がある、最後にある「人間はいくつになっても成長できるんだ」は、読者に対する力強い希望のメッセージである。
 しかしハンディな体裁と読みやすい文体にも関わらず、本書の内容はずしりと重い。とりわけ「人間であって、人間でなかった」というしげさんの言葉は、人間とは何か、<人間として生きる>とはどういうことなのかを読者に問いかける。「飼い殺し」としげさんがいうように、ただ死なないように生かされているだけでは<人間>とはいえないのだ。
 さらにこの本は、自分自身のなかにある差別意識への直視をも迫る。しげさんたちに非人間的生活を強いたらい予防法は廃止され、それに対する国家賠償請求訴訟にも勝利した。しかしそれで、この問題はほんとうに解決したといえるのだろうか。たとえば昨年、世界を震撼させた新型インフルエンザ対策において、日本で実施された「水際作戦」なるものは、かつての無癩県運動とどうちがうのだろうか。自己の領域の<清浄>をたもつために、<不浄>とされたものを排除隔離する、ここにはハンセン病者を強制収容したかつてと同様の発想があるのではないか? それに気付かせてくれた点でも、わたしにとっては本書の意義は限りなく大きい。

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第30回(2010年度)山川菊栄賞

●山川菊栄賞贈呈式に代わる上映会報告
3月26日(土)午後、東京ウィメンズプラザで予定されていた山川菊栄賞贈呈式と記念スピーチは、東日本大震災による電力不足で交通事情がよくないこと等から、中止になりました。ただし、『働く女性とマタニティ・ハラスメント』で受賞された杉浦浩美さんは、ドキュメント山川菊栄の思想と活動「姉妹よ、まずかく疑うことを習え」の上映会にお見えになっていたので、記念会のメンバーだけで寂しかったのですが、贈呈しました。なお準備されていた記念スピーチは富士見産婦人科病院被害者同盟の方たちのものも含めて何らかの形で、発表できるようにする予定です。
ドキュメント「山川菊栄の思想と活動『姉妹よ、まずかく疑うことを習え』」は一年をかけてようやく完成したこともあり、「少人数でも見てもらいたい」との山上千恵子監督の希望で開かれました。せいぜい50人かとの予想を越えて100人以上が見に来て下さいました。
見終わった人の感想は、「感動しました」「すごい人だったんだと改めて思いました」「これで若い人に知ってもらえたら」という素直なものが多かったのですが、「山川菊栄の経歴までであとはいらなかった」「今後に活かすことを提案していてよかった」という正反対の感想とともに、「出演者自身が山川菊栄を知らないんじゃない」「菊栄は労働に格別の思い入れがあったはずなのに、そこが描かれていない」といったひじょうに辛辣な感想もありました。
山川菊栄が論評した分野が多岐にわたっており、そのそれぞれに共感をもって今現在活動している人たちが見に来てくださっただけに、その受け止め方もさまざまだったように思われました。
なお、山川菊栄生誕120年を記念して、昨年1年間にわたって取組まれた3回の学習会、およびまとめのシンポジウムなどを収録した冊子が、当資料室から発行されています。
                                                    <当資料室会員 中村ひろ子>


<山川菊栄記念会からのお願い>
*上映会を企画して下さい。
ドキュメント「山川菊栄の思想と活動『姉妹よ、まずかく疑うことを習え』」
 企画:山川菊栄記念会  上映時間:74分
 制作:ワークイン<女たちの歴史プロジェクト>
 構成・監督:山上千恵子   撮影・構成・編集:山上博己
 貸出料:3万円(100名を越えたら5万円)
*パネル展示を企画して下さい。
山川菊栄の思想と活動をまとめたパネル
A1(縦84センチ横59・4センチ)サイズ 9枚
貸出料:5000円(送料は実費負担)―2週間程度
ドキュメント、パネルのお問い合わせは、山川菊記念会事務局までお願いします。
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Tel 090-2165-4038 Fax 0466-26-6135
*生誕120年記念行事をまとめた冊子を購入して下さい。
『山川菊栄の現代的意義 今、女性が働くこととフェミニズム』
 ・シンポジウム「今、女性が働くこととフェミニズム」(2011.11.3)
 ・学習会第1回「アジアと日本をつなぐ」(2010.4.23)
・学習会第2回「欧米フェミニズムと菊栄」(2010.6.20)
・学習会第3回「同一価値労働同一賃金について」(2010.7.31)
・シンポジウム「21世紀フェミニズムへ」(2000.11.18)
・山川菊栄記念会メンバーのエッセイ
・展示パネルの紹介(菊栄の年譜を含む)
頒価:1500円 +送料:290円  
発行:労働者運動資料室  T&F03-5226-8822


●2010年度山川菊栄賞推薦の言葉
                             浅倉むつ子
杉浦浩美さんの『働く女性とマタニティ・ハラスメント』は、女性の「妊娠期の働き方」に焦点をあてて、「労働する身体」の意味を問い直そうとする、とても刺激的で意欲的な本である。背景にあるのは、出産を機に7割程度の女性が仕事を辞めているという事実である。ある時期以降、日本でも平等化戦略が進み、女性たちは新たな身体性(「労働に適した身体」)を獲得したはずなのに、なぜこのようなことが起こるのか。この疑問を明らかにするために、杉浦さんは、妊娠しながら働き続ける女性たちにアンケートやインタビューを行い、丁寧な理論的分析を加えて、「女性がごくふつうに働くこと」の困難性というところに、根本的な問題を見いだしている。
妊娠期に経験する葛藤や困難を社会的な問題とするための装置として、杉浦さんは、「マタニティ・ハラスメント」という概念を提示する。その経験の中から浮き彫りになるのは、女性は「労働する身体」と「産む身体」の矛盾の中で生きている、ということであり、そこから得られる知見は、以下のように、非常に新鮮なものがある。
「労働する身体」(すなわち「男性並の有能さ」)によって敬意やメンバーシップを獲得した総合職女性も、「まぎれもない女の身体」をさらけ出す、妊娠というプロセスを経験する。それゆえ、フェミニズムの側からは、「平等幻想」を内面化した存在として批判されがちな総合職女性も、決して「勝ち組」ではなく、働く女性すべてが共有する困難さを経験している。他方、これまで「女性が働くこと」の解釈には、「優秀」か「家計が苦しい」かの二つしかなかったことに照らせば、「一般職」女性の「ごく普通に働きたい」という気負いのない両立願望こそ、新しい女性の労働観の芽生えであろう。なぜなら、女性が働くことは特別なことではない、その女性が妊娠すればこういうことも起きる、という主張は、「労働する身体」が、「男性の身体」を前提とした「ケアレス・マン」モデルにすぎないことを告発するからである。女性労働者の「身体性の主張」は、「ケアレス・マン」モデルの強制への異議申立てである。
そして、「妊娠する身体」を通じて、男性とは異なる「労働する身体」を改めて問い直す女性の試みは、「身体性の困難」を経験している障がいのある人、病気の人などに共通の問題を想起させる。すなわち女性労働者の妊娠期を問うことは、労働領域の「多様な身体」の可能性を問うことなのである。


●杉浦浩美氏略歴
1961年 東京生まれ
早稲田大学第一文学部卒業後、株式会社徳間書店に入社。編集者として16年間勤務した後、立教大学大学院社会学研究科に進学。2008年、同博士後期課程修了。博士(社会学)。
現在は、立教大学、法政大学、東京家政大学ほか兼任講師。立教大学社会福祉研究所研究員。
関心領域は、労働とジェンダー、家族社会学。
主な研究業績
「総合職・専門職型労働における妊娠期という問題-聞き取り調査の事例をもとにして-」『女性学』2004年
「母性保護要求をめぐるジレンマ」『家族研究年報』2004年
「差異化される女性労働者-出産退職をめぐる考察」『年報社会学論集』2006年
「「働く妊婦」をめぐる問題」『女性労働研究』2007年
『女性白書2010 女性の貧困』(共著)ほるぷ出版 2010年
『差別と排除の[いま]6 セクシュアリティの多様性と排除』(共著)明石書店 2010年


●2010年度山川菊栄賞特別賞推薦の言葉
                                                                        丹羽雅代
山川菊栄記念婦人問題活動奨励賞・特別賞
「富士見産婦人科病院事件―私たちの30年のたたかい―」  
             富士見産婦人科病院被害者同盟・原告団編(出版一葉社)
正直に言うならば、740ページにも上るこの本を手にしたとき、そこに込められた思いを、私はちゃんと読み取れるだろうかと不安でした。何しろ重たいのです。いつも持って歩くリュックに詰め込んで、電車の中でつり革につかまりながら開くなどということができる代物では絶対にありません。寝転んで読むのも大変です。ちゃんとイスに座って机に向かってしっかり向き合うことを、本が要求するのです。
この事件がどんな内容で争われたのか、原告だった方々とほぼ同世代の私は、外形は知っているつもりでした。彼女たちの頑張りや、多くの協力者の良心がどのような判決を手に入れたかも知っていました。出し続けられた通信も、時々は手にしていましたし、報告集会に出たことも何度かあります。でも本当のところは分かってはいなかったんだなあ、2日がかりで読み通したときに湧きあがった気持ちでした。
事件が起きたのは今から30年前、若い世代が多く居を構え、子育てをし、地域を作っていく東京近郊の街の、おしゃれな外見の最新機器による診療が売り物の病院が舞台でした。1000人を越える女性たちが医師資格も持たない理事長による診断で、高額な費用を払って、健康な生殖器を摘出されたという被害報道は、大変な衝撃を特に女性たちに与えました。なぜそんなとんでもないことがやすやすと起きてしまったのか、加害者たちはなぜ刑事責任を問われることはなかったのか、医療関係者を告発することがなぜそんなに困難なのか、なぜ原告団は民事裁判で勝てたのか、大変困難といわれる医師免許剥奪までを実現できたのか…沢山の疑問符に対し、本書は丹念に集められた資料を示しながら明かしていきます。
それは日本全国にとどまらず地球規模の動きを要求し、しかも30年という驚くほどの歳月が必要で、多額のお金も要ったことでしょうし、多くの有名無名の人々や団体の利害を超えた協力無くしてはできなかったことでもありました。
 この本は、一つの事件の発端から終結までの活動の記録にはとどまらず、女性たちが自分の心身を取り戻し、私を生きるために必要なことをしっかり手に入れていくためにどんな困難を乗り越えなければならなかったのかをわかりやすく整然と示しています。
 被害者同盟の方々が、しっかりと積み上げて女性たちの手に届けてきてくれたもののすそ野、影響はとてつもなく広いものとなっています。しかしその価値をしっかり見定めて上に重ねていく次の一歩がなくなったとたんに、あっけなく消えていくこともありそうです。この本を手にすることで、おくすることなく担い手にならなくてはという気持ちが、次世代の女性たちに湧くであろうことを感じます。
 歴史は動かそうとする人々の意志があって、その輪が広がることによって、確実に動くのだということを改めて確信させてくれるずっしり重い一冊です。   

●2010年度山川菊栄賞特別賞受賞者
富士見産婦人科病院被害者同盟
富士見産婦人科病院被害者同盟原告団  
略歴
 
1980年9月   富士見産婦人科病院事件が発覚。保健所に訴え出た患者
        数は1138名に達した。
同月      富士見産婦人科病院被害者同盟結成。真相究明、責任追及・
        再発防止を訴えて活動開始。
同月      理事長・院長・勤務医を傷害罪で刑事告訴
1981年5月  原告団を結成し民事提訴。被告は、病院・理事長・院長・勤務
        医、そして国・埼玉県。
1982年5月  『乱診乱療』(晩聲社)発行
同年10月   サンフランシスコ国際産婦人科学会で被害者同盟医師団が報告
1983年8月  傷害罪告訴が全て不起訴処分になる。
1984年2月  「薬害・医療被害をなくすための厚生省交渉実行委員会」発足、参加
同月      「女のからだと医療を考える会」発足、参加
1986年4月  『所沢発なんじゃかんじゃ通信』の発行開始
1999年6月   民事裁判第一審判決(東京地裁)。「およそ医療とは言えない、
        犯罪的行為」と認定。富士見病院側に全面勝訴も、国・埼
        玉県には敗訴
2004年7月   勤務医らの上告が棄却となり勝訴判決が確定
2005年3月   厚労省が元院長に医師免許取消処分。勤務医たちも医業停止
         等の処分に。
2010年6月   『富士見産婦人科病院事件 私たちの30年のたたかい』(一
         葉社)発行  

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第24回山川菊栄賞

●第二十四回山川菊栄賞贈呈式報告
  第二四回(2004年度)山川菊栄記念婦人問題研究奨励金の対象が「性暴力の視点から見た日中戦争の歴史的性格」研究会と決定し、去る一月二三日(日)午後、文京シビックセンターで贈呈式が行われました。
 式に先立ち、高齢の菅谷直子選考委員代表に代わり、重藤都さんから、会の趣旨、山川菊栄さんの人柄についての紹介がありました。それは「上から下へ、賞をやるといった態度を非常に嫌がる人だった。この賞はあくまでも将来に期待される人にたいして、これからの研究に役立てて欲しくてさしあげるのだ」という菅谷さんの例年の挨拶を引いての紹介でした。
 贈呈式は、井上輝子選考委員長の、応募作品一九点の概要についての説明から始まりました。第一次選考で四点に絞られ、その上で、先の研究会の作品『黄土の村の性暴力―大娘(ダーニャン)たちの戦争は終わらない』が選ばれたのです。
 直接の推薦の言葉は、加納実紀代さんから、熱くあつく語られました。「女性史成立以来、『女性史とは何か』がつねに問われてきましたが、この本こそはその答えです」。そして、「自分自身も聞き書きでの女性史をつづってきた。男性史の補完であってはならないとの思いがある。文献資料が絶対視されてきたが、ヒストリーは男の歴史であって、ハーストリーは残されていないものなんだ。確かに聞き書きでは、子どもが○歳の頃と、年も定かでなく、周辺数メートルの出来事しか語れないものだが、その積み重ね、つながりで歴史が浮かび上がるものである。この本は、第一部聞き書き、第二部背景についての論文集を載せることで、歴史書になっていると言える」とまさに絶賛とも言うべき推薦の言葉でした。
 また「日本軍の手から逃げられるものとは思わないが」と前置きしつつ、「纏足が女性の自由を奪っていた事実」に、彼女達の生活空間が見えるとも語られました。そして、駒野陽子さんから、研究会代表の石田米子さん(岡山大学名誉教授、歴史学)に贈呈されました。
式後の受賞記念講演は、石田さんによる、出席された執筆メンバーの紹介から始まりました。
そして、本のもう一人の編者内田知行大東文化大学教授から、研究会は「中国における日本軍の性暴力の実態を明らかにし、賠償請求裁判を支援する会(略称:山西省を明らかにする会)」が活動を続ける中で発足したもので、いわば二人三脚での歩みだったと、その性格説明がありました。また、内田さん自身は、中国現代史が専門だが、この研究会に関わることで、文献資料に立脚して歴史を語ることの危うさを知ったと語られました。被害女性たちの話を聞き、それを裏付ける資料を探したが、そうした資料はなかった。つまり、記録というのはその当時の人々の問題意識の反映だということに思い至ったというのです。それから、文献資料では、日々食べているもの、生活がわからないとも言われた。内田さんは、黄土の村々に行く前は、とうもろこしの饅頭(マントウ)を食べているのではないかと想像していたが、現地に行ってみると、からす麦の素うどんが昼食だったように、記録されていないものがあることがよくわかったそうです。
石田さんは「山西省性暴力被害女性の尊厳回復への道と私たち」というテーマで話されました。
「本の主人公は、他の地域の被害者と同様に50年の沈黙を破って発言し始めた大娘たちです」という言葉から始められ、「10年を経た今日、本来ならもう解決のときのはずですが、かき消されそうになっている」と続けられたのでした。「私たちの責任なんですよ」という石田さんの気持ちが伝わってきて、ずしりと応えました。
執筆者は14人ですが、現地調査には計50人近い人が行っており、通訳をしてくれたり、テープを起こしてくれた人も10数人に上るということでした。女性が多いけれど、男性もおり、若い人から高齢者までいる、こうした多様な人が関わったのはなぜか。なによりも被害女性が、様々な条件下で、カミングアウトし、訴えることで生きようとしている、その存在に圧倒されたからだと言います。
最初の出会いは、92年に被害を訴えて来日した万愛花さんの話に圧倒された石田さん達が、もっと詳しく聞きたいと黄土高原の東端を96年10月に訪れたときからだそうです。当時は日本人が農村に入ること自体が難しく、中国人の協力者もなかったと言います。(山西省孟県の農村へは、関空から、北京か上海を経由して太原市に飛び、そこからマイクロバスにゆられて早くて3時間かかる)年2回2年の現地調査を繰り返すうちに、98年10月東京地裁に提訴することになり、裁判を支援する会を作り、さらに実態解明をする研究会を発足させたのだそうです。
 この裁判に関わる中では、被害者個人の問題に即してやる、個別性にこだわる、そのためにはとにかく「向き合って話を聞こう」という姿勢を通したと言います。被害者は、存在そのものが恥という認識の中で生きてきており、当時を知る村人たちも同情はしつつもそのことには触れないので、夫にも話せないまま死んだ、娘が子どもを産むときようやく話したなど、沈黙を強いられてきたわけです。「苦しみは被害であって責任はない」という認識に立つまでには相当な期間と対話が必要だったようです。今、原告10人を支えているが、その10人が互いに知らないまま生活してきて、近くにカミングアウトした人が出ると、次第に勇気付けられて増えてきた経緯も話されました。弁護士の言葉として「人生被害」という表現を紹介されましたが、50年前の被害、過酷な経験が、その後の彼女達の一生を支配したという意味で、非常に的確な表現ではないかと思われました。石田さんの「歴史の問題であると同時に今何をなすべきかが問われている」という締めくくりは、石田さんの最初の問いかけに戻るものでした。
 その後、執筆者の一人の池田恵理子さんがつくられた、同趣旨の記録ビデオを見ました。さらには参加者の一言を聞くコーナーがありましたが、鈴木裕子さんが「加害国の一員として、女性の一人として、何も成果が出ていないことに忸怩たるものがある。申し訳ない」と言われたのが、石田さんの話とも重なり、重く受け取りました。       以上


●受賞者、作品紹介
贈呈対象者「性暴力の視点から見た日中戦争の歴史的性格」研究会・代表石田米子
対象作品『黄土の村の性暴力―大娘(ダーニャン)たちの戦争は終わらない』創土社
日本軍による性暴力被害者の裁判を支援する市民グループ「中国における日本軍性暴力の実態を明らかにし賠償請求裁判を支援する会」(略称「山西省・明らかにする会」)が、1996年以来重ねてきた現地聞き取り調査をより広い観点から深めるために、専門研究者の協力を得てつくった研究会。1999年に発足。定期的な研究会活動を積み重ね、その成果として『黄土の村の性暴力―大娘(ダーニャン)たちの戦争は終わらない』を分担執筆により作成、出版した。
 研究会を構成するメンバーは、大学に籍を置く専門研究者も含めてそれぞれ本業はさまざまであり、性別・年齢・居住地も幅広い。重層する視点から性暴力の実態と構造を明らかにし、日中戦争の見方に新たな問題提起をしえたとすれば、それはこのような会の構成と協力に由来する。
 なお、この研究会は、財団法人日中友好会館日中平和友好交流計画歴史研究支援事業から3年度にわたる研究助成と出版助成を受けた。
●推薦の言葉  加納実紀代
ああ、やっと…。『黄土の村の性暴力』を読み終わったとき、私は感動をもってそう思いました。女性史成立以来、「女性史とは何か」がつねに問われてきましたが、この本こそはその答えです。女性史は男性史の補完ではない、女性の痛覚に根ざし、歴史学の知のシステムそのものを問い直すものだ―とはいうものの、それを具体化するのは非常に難しい。しかしこの本の著者たちは、日本軍による性暴力被害中国女性の痛覚に向き合い、よりそい、その声に真摯に耳を傾けるなかから、これまでとはまったく違う日中戦争史を描き出しました。それは日本側の歴史学はもちろん、中国側の輝かしい抗日戦争正史の欠落をも明らかにするものです。
この本は、中国山西省の黄土の村を襲った日本軍の性暴力について、被害女性や周辺の人びとの証言を集めた第1部と、その背景についての論文集からなっています。それのよってこの問題を、主観と客観、個別と全体を総合する重層的・構造的なものとして明らかにしていますが、とりわけ興味深いのは、被害は日本軍占領当時に限られるものではなく、のちのちまでも個々の被害女性はもちろんその家族や地域社会全体にまで根深い影響を及ぼすものであることを明らかにしたことです。これはこれまでのいわゆる「従軍慰安婦」研究にはないあらたな視点です。
 そのために著者たちは交通不便な黄土の村に18回も足を運び、被害女性との交流を深める中で「出口気」(長い間の胸の中のわだかまりを吐き出す)を促しますが、その過程で著者たち自身も研究者としてのみずからを問い直し、既成の歴史学のの限界を突破していきます。その意味でこの本は、現時点における女性史の到達点であると同時に、歴史学総体に対する鋭い問題提起の書といえるでしょう。あらためて著者たちの労苦に感謝するとともに、男性研究者にも広く読まれることを願ってやみません。

山川菊栄賞へ
http://www5f.biglobe.ne.jp/~rounou/yamakawakikue.htm

2011年5月12日木曜日

労農派の歴史研究会再開のお知らせ

日時 5月18日
会場 労働者運動資料室
テキスト 新中期路線
レポート 善明建一

<再開のご挨拶> 山崎耕一郎
 思いがけぬ事故で、学習会が中断してしまいました。雨上がりの下り坂の道路を自転車で走っている途中で転倒し、頭を打ったので、2週間ばかり、順天堂医院に入院してしまいました。おまけに、心臓弁膜症の手術をした後、ワーファリン(血液サラサラにする薬)を飲んでいるので、脳内に出血した血液がなかなか消えません。2 7日にも入院して、脳内に残っていた血液をぬいて、やっと終わりましたが、また血液がたまる可能性も残っているそうですが、一応は、元通りになりました。
 テキストに選んだ資料は、70年代の社会党では、よく使われた文書です。70年の闘争を背景にして議論されたこの文書は、社会党の国会闘争ではよく話題になり、政権構想を議論するときにも使われました。文書の作成には、社会党本部の社会主義協会員が熱心にかかわり、思い入れが強かったものです。私(山崎)は、当時は社青同運動で頭がいっぱいだったので、あまり熱心には読まなかったのですが、党本部の人たちとの議論では、よく話題になりました。
 当時の社会党は、総評と連携して、政権の獲得に意欲的であったし、力量もありました。この頃の総評は、左派の影響力が強かったし、国会議員が出身の労組や所属県本部よりも右この思想の人が多かったので、主張も政策も、なかなか筋が通っていました。90年代以降の、労組出身議員の雰囲気とは、かなり違っていたと思います。「55年体制」を象徴する文書と言っても良いと思います。
 冷戦が終わり、新自由主義が世界を蔽った時代とは、まったく雰囲気の違う時代でした。90年代には「階級闘争のあった時代」は過去のものとされていましたが、その新自山主義 (市場原理主義)も勢いを失っていて、また新たな時代に入りつっあります。どういう時代になるか、期待を持ちながら、歴史と現代との比較を行いたいと思います。

*山崎耕一郎さんは文中にあるように事故で2月下旬から入院されていましたが、現在は退院し活動に復帰されておられます。(管理人)

2011年5月11日水曜日

移転のご挨拶

労働者運動資料室HP管理人です。これまでの「管理人より」が母体の「さるさる日記」の廃止決定により維持できなくなるため、新たにブログ形式で移転、新規開始することにしました。 基本的な内容はこれまでと変わりませんが、ブログでは千字という字数制限はなくなります。また画像も掲載することができます。
 コメントもつけられるのですが、現在の状況を考え、当分の間コメント不可にします。 今後ともよろしくお願いいたします。

これまでの「管理人より」
http://www4.diary.ne.jp/user/447206/